二 施設の衛生管理


別表第十七(第六十六条の二第一項関係)を基にまとめる、衛生管理計画書(例)


ーー解説ーー

 施設及び設備の清掃については、管理区域毎に、清掃場所・清掃頻度・清掃方法を明記した、清掃チェックリストを作り、実施記録を残しましょう。

 「外周・エントランス・緑地」「サニタリー・共用部」「原料倉庫」など、場所や実施する担当者毎に、その場に必要な清掃項目と清掃頻度、適切な方法を定めてチェック表を作成します。

 清掃チェック表は月毎・日別の表にして、実施したら○印、していないところは斜線をつけて、清掃の出来栄えについては、食品衛生責任者が確認してチェックする欄も作りましょう。

 チェック表に「泡洗浄して30分後水洗」とか、「中性洗剤で洗い水ですすぐ」など、簡単に方法を記載しておくことで、ついつい自己流になり、気付くと清掃方法が変わっているということが防止できます。

 ここでは清潔な状態の維持が求められています。食品衛生責任者は定期的に現場の衛生状態をチェックするようにしましょう。

 

 作業場内への不要物の持ち込みは、食品への異物混入や汚染の原因になります。食品を取り扱う作業場内へは、私物の持ち込みを禁止することが必要です。

 作業場で使用するものは、会社で用意したものに限り、定数・定位置を表示して管理しましょう。

 ここでは不要物がないことを求められていますので、食品衛生責任者が定期的に巡回チェックを行う様にしました。巡回チェックの内容については、巡回チェックマニュアルに定めておくと、何を確認するのか明確にできます。

 

 施設の内壁や天井、床の清掃については、頻度を決めて清掃を実施しチェックリストに記載することで管理します。

 床は毎日の清掃が必要な箇所であり、腰高の壁は毎日から毎週、高所の壁や天井は毎週から毎月という頻度で清掃することが一般的でしょう。高所の天井の場合は、足場を組んでの清掃になるため、年間1から2回程度かもしれません。それぞれの施設に応じて、汚染の程度や害虫の発生状況を確認しながら、適切な頻度を設定しましょう。

 

 照明については、今回の要求事項では適切であることが求められています。

 見やすい明るさについては、年齢や個人の感覚によって違いがあるため、照度で規定するより、作業のしやすさで必要な明るさを考える方が良いと思います。

 照明についてはLEDに変わりつつありますが、蛍光灯を使用する場合は、飛散防止対策を考慮しましょう。

 

 換気については、コロナウイルス対策としても重要になっています。食品を取り扱う施設では、換気扇はあっても給気設備がない施設が多く見られます。作業中に施設内が陰圧になると、外部から虫や塵埃を吸い込む懸念があります。フィルターを用いた給気ファンの設置や、細かいメッシュのフィルター越しに外気を取り入れるなど、陰圧を回避する対策を考えましょう。

 

 湿度については、通常の施設で湿度の管理までできる空調を持つところは少ないと思います。通常の空調で湿度の管理基準を設けることには無理があります。湿度が高いとカビや食中毒菌の増殖につながりますが、簡単な除湿機の使用では効果は限定的です。

 管理基準を設けると、それを逸脱した時の対応を決める必要がありますので、製造環境や製品特性と合わせて考える事が必要です。

 

 食品や原料の保管施設については、食品に合わせて温度管理基準を決め、1日に2〜3度測定して確認することが一般的です。冷却機器の不都合で温度異常が発生した場合は、すぐに適切な温度帯の場所に食品を移動し、故障の箇所を修繕する様にします。

 

 外部に面したドアの開放は、昆虫や害獣、塵埃を作業場内に侵入させてしまいます。フードディフェンス的観点からも、ドアの開放は禁止する方がいいと思います。

 換気のためのに窓を開放する場合は、窓を細かいフィルターで覆うなど、防虫対策を施しましょう。

 

 排水溝については、固形物の流出を防ぐためのトラップやピットを、自治体の条例などを守って設置しましょう。それらの設備は、作業終了後の清掃を清掃チェックリストで管理しましょう。

 破損箇所が発生した場合は、食品衛生責任者が把握し、営業者と相談して補修計画を立てるよう、巡回チェックマニュアルにルール化しておくと良いと思います。

 

 便所の清掃は、専門業者もしくは専任者により実施しているところが多いのではないかと思います。その際も、清掃マニュアルの作成と清掃後にチェックリストをつけることが必要です。

 トイレは感染症の起点となりやすいため、便器や取手など、手が触れる箇所は、アルコールなどで定期的に殺菌するよう、マニュアルに加えておきましょう。

 

💡ポイント!

 お金をかけた施設の改修などを前提にせず、知恵を働かせ、今できることで要求事項に答えていくことが大切です。

 食品衛生責任者が作業の中心として忙しい場合、巡回チェックや温度記録などは、誰か補助の担当者を決めて任せ、その結果を食品衛生責任者が確認するようにしてもいいわけです。

 実施しやすく、確実に実施できる方法を考えましょう。