昨日、厚生労働省と株式会社モスフードサービス(以後モス社)は、4日前の長野県での食中毒に続き、関東甲信地方の8都県にある「モスバーガー」を利用した28人に食中毒が発生し、この中の13人から長野県で検出されたものと同一遺伝子の腸管出血性大腸菌O121が発見されたと発表しました。
モス社では、「同時期にチェーン本部から納入した食材が病因となった可能性が極めて高い状況です。」と表明し、再発防止対策として、「生鮮野菜にはより一層有効性の高い洗浄、除菌方法の選択・導入を行う」ことと、食材(パティー、カットオニオン、生鮮野菜)の検査項目に腸管出血性大腸菌O121を加えると書面で発表しました。
食品を検査すればその安全が確認できるかについては、なぜHACCPの導入が必要かという話につながります。
食品の菌検査においては、検査するタイミングや、菌の損傷状態、サンプリング方法などによって、検査結果が大きく異なる可能性があります。
殺菌直後の検査で陰性が確認できても、損傷菌がその後立ち上がる可能性があり、増殖予測という概念だけで安全性を推し量ることは実務的には困難だからです。
また、検査には検査機関に依頼すると、少なくとも4、5日の検査期間が必要で、生野菜やカットオニオンの使用期限をそれまで伸ばすこと自体、品質に大きく関わってくることが懸念されます。
さらに、検査期間を縮めるために自社検査するとなると、病原性の高い菌を食品工場で扱って良いのかという問題にもなるでしょう。
全ての食品の安全を菌検査で確認できないから、HACCPで確実に抑えられる方法を構築する必要があるのです。
今回のO121食中毒について原因食品は発表されていません。
アメリカで2016年から続いたO121食中毒アウトブレイクの原因は、大手メーカーの小麦粉であったと昨年発表がありました。
過去には牧場にキャンプで訪れた小学生がO121を集団発症したことがあり、牧場の土壌や水路の水から検出されたと報告されています。
モス社が発表されているように、生野菜の洗浄・殺菌方法をより安全なものにできるのなら、その対策を急ぐことが必要です。
その上で、生産から配送、フランチャイズでの取り扱い、使用期限まで保管した食品などの、段階的な微生物検査を定期的に実施することで、季節ごとの変動を把握でき、本来の危害と対策が明らかになるでしょう。
必要なのは刹那の対策や学術的な予測データでなく、実際動いている食品の実態と、今後必要なデータの蓄積なのです。
コメントをお書きください