山陽新幹線で、運転手が走行中の異常音に気づきながら報告せず、人身事故と車両破損を見過ごしたまま2駅間走行を続けたという事態が発表されました。JR西日本では、12月に発生した山陽新幹線台車亀裂見過ごし事件から、半年で同様の報告・確認軽視による不祥事が再発したことになります。
事故後最初に停車した駅の係員も、車輌先端に血液が付着し、破損した部分があるのを気付きながら見過ごしてしまいました。次の駅で対向車の運転士が気付き、本部に報告したことにより表面化しました。
事故車輌の運転士は、動物が衝突したのだろうと無視したとのことです。JR西日本では、動物が衝突した場合も列車を停止して安全確認を行うルールがあります。乗客の安全確保のため異常発生時の確認は必須です。人身事故なら人命救助の面からも早期対応は不可欠です。明らかな異音発生時の見過ごしは、危機管理の不徹底と言うほかありません。
食品製造の場でも、製造機器の一部破損による異物混入は、異常時の対応や確認の不備が原因と言えます。直近の自主回収情報で、この回収が数件連続して発生しました。
プラスチック片、ゴム片、金属片と色々なものが報告されています。その中でも、大手ケチャップ製造業で発生した事例では、回収対象品の賞味期限が半月間に渡っており、破損発生時点が特定できていない状況が見て取れます。
前職の食品検査機関で、色々な食品工場への衛生点検を経験しました。
食品製造工場では多種多様な製造機器を使用しており、カバーやベルト、パッキンなどに、ひび割れや欠けがあるまま使用しているところが多く見られました。
食品製造機器は、今では異物混入対策済みとか、分解洗浄可能とか、HACCP仕様などとうたったものが発売されています。しかしながら、工場で使用されている古い機械には、割れやすく、洗浄しにくい、交換費用が高くつくという部品が使われています。使用されているボルトの数も多く、ボルトがない箇所が見られる場合もあります。これらの確認や異常音への対応は、異物混入対策として不可欠です。
食品が直接接触する機器には、メンテナンスや洗浄が必要なのは当たり前です。ですが、製造コストを考えると、稼働は最大限に行い、メンテナンスや洗浄は最小限に控えるというのが、ほとんどの経営者の願うところです。作業者が「ここで異常を報告したら、邪魔臭い確認作業が必要になって製造が遅れるな…」と考えてしまうのは、会社の本音に問題があると言えます。
担当者が「このくらいなら大丈夫かな…」と判断してしまうのは、ルールに不備があると同じことです。
異常が発生した際のルールは、上司に報告した後、実施内容を記録することが基本です。起きた異常について、事の大小を作業者に決めさせてはいけません。必ず上長に報告するように教育しましょう。
報告を受ける上長は、それが製品として出荷された時、消費者の不利益を招き、大きな事故や回収につながらないかという視点で考えることが必要です。
事故やクレームを防ぐためには、経営者が会議などで、会社の方針として安心・安全重視の姿勢を表明し続ける必要があります。
少しでも安全軽視の姿勢を見せた途端、社員の末端まで忖度が始まります。結局、社長の社員や消費者、施設や機器を大切にする気持ちが、製品の品質を向上させ、事故を防ぐことにつながるのです。
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