別表第十七(第六十六条の二第一項関係)を基にまとめる、衛生管理計画書(例)
ーー解説ーー
イ この項目は要求事項が分かりにくいのですが、施設の衛生区分に順じて製造機器が配置され、交差汚染が防止されているかという設問であると思います。汚染された原料と、そのまま食べる食品を同じ機器を使用して製造することは、食中毒防止の観点からも避ける必要があります。
交差汚染を防ぐためには、作業場内の衛生作業区分を明確にし、近接した場所で生鮮原料など汚染原因となるものと、加熱後や殺菌後のそのまま食べる食品が、取り扱われないようにする事が大切です。作業場の衛生作業区分図と機器の配置図で安全性を確認しましょう。
ロ ここでは機械・器具類の洗浄と管理、メンテナンスについて聞かれています。
機器類は洗浄マニュアルに沿った洗浄を実施し、清掃チェックリストで清掃記録を残すようにしましょう。
ひび割れや欠けといった異常があった場合は、食品衛生責任者に報告し、異物混入の確認と、破損したものを使い続けない事が大切です。
機器や装置の補修や整備に関しては、適切な一時補修を施すなど対応をし、本補修の実施まで異物混入防止対策を取るなど、適切なルールを決めておきましょう。
ハ 洗剤に関しては、CIPや自動洗浄機に使用する洗剤の中には劇薬扱いのものもあります。安全データシートを取り、洗剤毎に使用マニュアルを作成し、保管場所、出納管理、保護具の着用、取扱上の注意などをまとめて、洗剤置き場に掲示しておくことが推奨されます。劇毒物の場合は鍵のかかる保管庫が必要です。
二 食品の安全性の管理・モニタリングに使用する装置についての点検と精度管理についてです。
圧力装置や水質に関わる装置、特定計量器等については、法的に求められる頻度で検定を受けるように年間計画を立てましょう。
製造する食品への影響が考えられる、加熱、冷却、圧着、計量などに使用される機器については、自社で標準温度計や分銅を使用して、定期的に確認して基準に基づいて管理しましょう。もちろん、基準を逸脱していた際の対応方法も決めておくことが必要です。
ホ 食品と接触する機器の洗浄・殺菌については、製造する食品により状況が違います。それぞれに求められる衛生度に応じて基準を考えましょう。
洗浄機や乾燥機を使用する場合は、使用する薬剤や温度設定などの管理基準を決め、定期的に記録・管理しましょう。食品に使用する器具などは、使用前のアルコール殺菌なども有効です。機器や器具、直接食品の通るラインは、定期的に拭き取り検査を実施することで衛生状態を確認することができます。検査を実施する場合は、管理基準を決め、逸脱時の対策を決めておく必要があります。
へ 洗剤や薬剤の誤使用による事故は注意すべき項目です。洗剤や薬剤の使用マニュアルには、注意事項をはじめ、希釈して使用するものには、希釈率や希釈方法も明記して、間違えることのないようにルール化しておきましょう。
洗剤や薬剤の小分け容器に、食品容器を再利用することはNGです。薬剤名や用途がわかりやすく表示された専用のものを、置き場を決めて個数管理しましょう。
ト 清掃・洗浄用具の衛生についての項目です。これも製造する食品により、使用する器具も、管理方法も異なります。それぞれの場で、衛生的な方法をルール化しましょう。
清掃・洗浄用具の材質や強度の選定ミスや、劣化したものの使用などで、異物混入事故が発生することがあります。
劣化や破損を確認する項目を清掃チェックリストに加え、破損が発見された際の確認方法をルール化しておきましょう。
チ 手洗い設備には、手洗いに必要なものが揃っていることが必要です。
先ずは衛生的な適温の水。水道水か飲用適の温水が出る水栓があること。手で触れなくても使用できるセンサー式が最適です。今はホームセンターに手ごろなものが売られていて、自社で交換できます。
手洗い石鹸は、液体で、無香料の物が推奨されています。
手洗い後に手を乾燥するためのもの。今はほとんどの所がペーパータオルを使用しています。コロナウイルス感染拡大当初、ジェットタオルの使用はウイルスを撒き散らすため、使用を禁止するよう指導されていました。最近、使用方法さえ間違えなければ、危険性が低いと発表されています。ポイントは吹き口や手を差し込む部分の壁を、洗浄後の手で触れないようにすることです。
洗浄後の手の消毒は、アルコールが推奨されています、アルコール消毒も度重なると手荒れの原因になるため、返って黄色ブドウ球菌の保菌につながります。手荒れの時は手袋を着けてからアルコール消毒をするというルールも、手洗いマニュアルに加えておくと良いと思います。
また、会社が決めた正しい手洗いルールを、手洗いの度に確認できるよう、手洗い場所には手洗いマニュアルの掲示が推奨されます。
リ 洗浄設備の清掃については、洗浄頻度と方法を決め、清掃チェックリストで実施管理しましょう。
生肉や鮮魚介類を扱うシンクで、生で食べる野菜や、水戻しや加熱後にそのまま食べる食品を扱うと、病原性微生物の交差汚染につながることがあります。シンクの洗浄だけでは病原菌を全て殺菌できないため、そのまま食べる食品には衛生的なバットなどを使用して、シンクに触れないようにすることが得策です。
洗浄設備や洗浄器具は、常に湿った状態で、洗浄前の汚染が残る可能性があることを認識しておきましょう。
💡ヒント
外部監査の時は、自社では必要ないレベルまで、かなり細所を指摘されることがあります。
食品製造において、問題ない誤差範囲や、管理基準の正当性について、説明できるようにしておくことが必要です。
その時に説明できないと、不必要な改善を求められる結果になることもあります。
その為にも、HACCPで製造工程を分析し、自社で必要な管理項目とその管理基準を的確に抑えておくことが重要です。