レッスン5 危害を防ぐ方法を決める


 参加者が抽出した、作業工程中の危害は、リスト化できましたか。

 

 次に、それぞれの危害について、次の点を考えてみましょう。

  • その危害をどうやって防止するか
  • その危害は、記録をとって管理すべき重要な危害か

  今回は説明の都合上、左の図のように全体の工程を1〜7の段階に区分して考えていきます。

  皆さんは、抽出された全ての危害を、工程番号順に分析していってください。

 

 ここからは、それぞれの危害要因について、記録を取るものには基準や逸脱時の対応を決め、それ以外の危害にはルールや対応方法を決めていきます。

 それでは、受入工程から見ていきます。

 

 原材料の受入工程では、入荷した原材料が品質的に問題ないか確認することがポイントになります。

 生鮮食品は、配送中に不適切な温度で長く置かれると、食品に存在する有害微生物が増殖して、品質が劣化する恐れがあります。

 そんな劣化した原材料を受け入れてしまうと、最終製品の品質不良や、作業場所の環境汚染につながりますので、受入時の品質チェックは重要です。

 

 原料の外装に汚れや破損、虫などの付着があると、食品や調理環境の汚染につながります。

 また、原材料の品名や産地が違うと、商品の表示や、アレルギー情報に誤りが発生します。

 

 「重要な管理点か」で、○になったものは、基準やマニュアルを作って記録をとって管理します。

 原材料の保管工程では、食品ごとに決められた保管方法を守り、汚染や劣化を受けないことが求められます。

 

 安全な食品を製造するためには、原材料は適切な温度で保管し、賞味期限までに使用しなければいけません。特に冷蔵品や冷凍品の保管温度は、食品の品質に直接影響するため、温度管理表をつけて管理し、使用前には必ず期限確認を行ってください。

 期限切れで廃棄する食品を減らすために、仕入れロットや数量を検討しましょう。

 

 食品は保管中の汚染を防ぐため、床から60㎝程度離した、衛生的な場所に、置場所を決めて保管しましょう。

 特にそのまま食べる野菜や果物は、食中毒菌を含む恐れがある生肉とは別場所で保管し、相互汚染を防ぎましょう。

  虫やネズミの害を防止するには、作業場内に餌場を作らないよう、日々の清掃が重要です。場所と頻度、適切な清掃方法を決め、チェックリストをつけて管理しましょう。

 そのまま食べる生野菜や果物の下処理では、食品に付着した有害微生物や異物を、確実に除去する必要があります。

 

 殺菌剤の濃度や、水洗の回数などは、マニュアルを作成して、確実に実施しましょう。また、器具やシンクから汚染を受けないよう、汚染した食品や器具と区分することも必要です。

  殺菌後の生食野菜果物が、食中毒菌の汚染を受けないため、生肉の保管場所とは区分しましょう。

 作業者からの汚染を防止するため、作業者の体調確認を実施し、手由来の汚染を防止するため、食品に触れるときは、衛生手袋の着用を義務付けましょう。

 また、アレルギー物質からの汚染や、異物や昆虫の混入を防ぐため、保管中の食材には蓋かラップで完全に覆いましょう。

 

 破損したザルの針金や、容器の プラ片など硬質異物は、重篤なクレームにつながります。器具の破損は作業前後に確認して使用しないようにし、確認記録に残しましょう。

 唐揚げの下処理工程では、鶏肉関連の食中毒菌である、カンピロバクターやサルモネラなどに対する、安全対策が重要です。

 

 鶏肉の解凍では、解凍中の食中毒菌の増殖や腐敗が問題です。

 鶏肉はこの後に加熱調理するので重要な危害には当たりませんが、原材料の微生物汚染が進むと、加熱時に生き残る菌が多くなり、その後の取り扱いが不適当だと食中毒につながる恐れがあります。鶏肉の解凍は冷蔵庫内の低温環境で行いましょう。

 特に急ぐ場合は電子レンジや流水を使用しますが、環境の汚染から交差汚染につながりやすいため、そのまま食べる食品との区分について、特に注意が必要です。

 

 おろし金やザル、調味料の計量カップなど、硬質の器具破片が混入する危害が考えられます。使用前後に確認して破片の混入を防ぎましょう。ひび割れや破損がある器具は、強度が落ちて破片が出やすくなるため、そのまま使用しないでください。

 下味をつけ、加熱調理まで冷蔵保管する工程では、使用する器具からの汚染や、保管中の異物やアレルゲンの汚染危害が考えられます。

 

 器具は保管中に洗剤や、汚水によって汚染を受けないよう、衛生的な場所で保管しましょう。洗浄シンクや床からの飛び水による、汚染を受けない場所で、上部からの落下物の汚染を受けないよう下向きで保管する等、衛生的な保管方法をルール化しましょう。

 

 鶏肉仕掛品に含まれる食中毒菌で、他の食品が汚染を受けないよう、そのまま食べる食品とは別冷蔵庫の使用が推奨されます。

 同じ冷蔵庫に保管する場合は、密封して最下段に置くなど、他の食品に汚染がおよばないよう注意してください。

 

 粉類は貯穀昆虫やカビの汚染を受けやすい為、開封後の粉原材料は、汚染を受けない場所で密封して保管してください。

 鶏肉以外の下処理工程でも、使用する器具、容器の破損による硬質異物や、他のアレルゲンや汚染物質の混入が危害になります。

 

 使用する原材料に異物や劣化があると、製品の品質に関わります。

 原材料は使用前に目視確認し、異常がある場合は使用せず、明らかに製造元による不良の場合は、書面で改善を求めましょう。

 

 缶詰を開ける際は、金属の切粉の混入がクレームに繋がります。缶切りの錆や、メッキの剥がれも異物クレームにつながるため、劣化した器具を使用しないルールを徹底しましょう。

 開缶後の食品を缶のまま保管すると、金属の酸化による異臭や変色が起こる場合があります。衛生的な容器に移して保管しましょう。

 

 ガラス瓶の調味料は、口が割れてガラス片が発生することがあります。なるべくプラスチック容器の物を使用し、ガラス容器を使用する場合は、使用前後に必ず確認するようルール化してください。

 加熱調理の工程では、 生の原料に含まれる病原性微生物を、安全なレベルに加熱殺菌することが重要です。

 特に鶏肉に含まれる食中毒菌は、少量の菌でも食中毒につながることから、加熱工程は重要管理点(CCP)として扱う必要があります。

  

 加熱温度の確認方法は、温度計で中芯温度を測る方法と、加熱後の製品に赤い部分が残っていないことを確認する方法があります。

 温度計を使用する場合は、表示温度に品質にかかわるほどの誤差が発生していないか、定期的に確認しましょう。

 

 植物油を長期間フライヤーに入れたままにしていると、油が酸化して酸化物による食中毒が発生します。揚げ油は試験紙で確認し、酸価が2.5を上回る場合は使用しないルールにしましょう。

 加熱後の製品の二次汚染防止の為、未加熱品を扱う器具と加熱後の食品を扱う器具は区別し、素手での取り扱いは禁止しましょう。

 破損した機器の使用は金属異物に繋がります。注意してください。

 

 炊飯やみそ汁などの、通常の加熱では死なない耐熱性菌による汚染が考えられる食品では、ホットキープ温度が重要な管理点になります。

 また、ブラマンジェのように比較的低い温度での加熱後冷却する食品では、残存病原菌や耐熱性菌の増殖防止の為、加熱後は、速やかに低温まで冷却し、冷蔵保管することが重要です。

 ここでは、盛り付け作業における、食品への汚染や異物混入を防止する対策と、お客様への適切な情報提供が重要です。

 

 特にアレルギー疾患を持つ消費者は、食品のアレルギー物質に対する表示を頼りに食品を選択されています。誤った情報は重篤なアレルギー疾患につながる恐れがありますので、表示に対する確認は重複して、記録をとって行いましょう。

 

 作業者の手から食中毒につながる事例が多発しています。素手で食品を扱うことは、少量の菌でも発症する食中毒につながる恐れがあります。従業員の体調管理と、衛生手袋の着用を義務付けましょう。

 

 作業場内でガラス製や陶器の食器が破損した場合、飛び散った破片が食品や食器に付着して、消費者の危害につながります。

 破損が発生した場合の安全確保に関するルールを決めて、実施した内容を記録して保管しましょう。

 皆さんが抽出された危害について、分析は終わりましたでしょうか。

 次のセクションでは、それぞれの項目について、基準や記録を作成し、作業ルールや衛生ルールを考えていきます。

 この分析結果も、今後、保健所や取引先の監査などで必要になる文書です。

 作成した文書は、コンピュータ内に保管するだけでなく、印刷して、会社の管理者による、確認、承認の捺印を受け、バインダーで保管しておきましょう。