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夏の微生物異常値対策


 夏場に微生物上の問題が発生する傾向がある場合、まず確認すべきは原材料の品質です。

 生野菜について言えば、冬と夏で食材に付着する菌数はかなり違います。もちろん肉や魚も付着する菌数は気温と共に増加していきます。

 加工食品についても、その菌数管理が最終製品の品質に影響することは間違いありません。冷凍果汁や香辛料など、微生物フリーの原材料に変更して、劇的に最終製品の菌数が減少した経験があります。

 生鮮原料原料については、新鮮なものを使用することが大切です。生野菜などは一度菌が増えてしまうと、どんなに殺菌しても1オーダーくらいしか下げることができません。肉や魚も初期菌数が加熱後の残存菌数に影響します。

 全ての品質管理の原点は、原料の適切な管理と言っても過言ではありません。入荷時の規格・品質確認、保管温度・環境の管理、消費期限の厳守など、記録を残して確認することが大切です。

 

 次に、決められた殺菌操作や加熱調理を行った後の、急速な冷却と低温保管です。

 以前、百貨店の取引工場の衛生点検のお仕事をしていた時、夏場、出店時の微生物検査で不合格になり、販売停止になったことがある惣菜工場に出向いた時のことです。

 こちらでは惣菜を加熱調理後、鍋ごと5℃のチラー水につけて急冷を行っていました。しかしながら製造記録を見ると、ここで2時間も放置されることがあるのです。

 この場合、チラー水に触れている鍋底は早く冷えるはずですが、常に撹拌していなければ、食品全体の温度が下がるにはかなり時間がかかります。さらに室温は夏場の常温であるため、部分的に温度が高い箇所もできていると考えられます。加熱調理で残存した耐熱性菌がその部分で増殖すると、場合によっては食中毒にもつながる可能性もあります。

 加熱後の食品を冷却する場合は、撹拌しつつ急冷するか、冷却しやすいように小分けし、急冷後は素早く冷蔵庫に移すことが大切です。

 

 また夏場は、加工機械や調理器具、保管容器の菌数も増加している場合があります。

 作業場全体の表面菌数も増加しているため、加熱調理後の食品を扱うとき、工程が複雑になる程汚染の危害が増加します。

 問題が発生しやすい食品については、特に夏場は自家調理を避け、代用できるものはそのまま利用できる殺菌された調理済み食品に変更することも対策となります。

 また、汚染につながりやすい調理器具などは、洗浄後適切な加熱殺菌を行い、使用までは冷蔵庫で保管することも有効です。

 作業前に手袋の殺菌を行うとか、番中など洗浄しにくい容器にはビニールをかけるなど、雑菌から食品を守る方法を試してみることも改善に繋がります。

 

 さらに、作業中食品を汚染する落下菌も夏場は増加します。

 落下菌は床の衛生と直接関連しています。床や溝に微生物が多いと、上昇気流により舞い上がり、落下菌となって食品を汚染します。もちろん靴の跳ね上げなどで食品を汚染する恐れもあります。

 床の衛生には、次亜塩素酸入りの泡洗浄による殺菌洗浄がおすすめです。これはタンパク質や油脂の汚れの除去に効果があり、カビの発生を防止するため、防虫にも効果があります。床材などの関係で使用できない施設もありますが、床や溝だけでなく、機器や壁、シンクの清掃も一挙に行えてかなり便利です。

 

 色々対策しても菌数が減少しない場合は、有機酸をうまく使用することも必要かもしれません。

 夏場は炊飯に酢を加えるのは、普通家庭でも弁当を作る時の知恵として知られます。適切に有機酸を使用することは、夏場の食中毒防止に欠かせないと考えます。

 

 最後に輸送や保存についてですが、年々暑くなる近年の状況では、今まで考えていなかった高温菌による品質劣化の対策も重要になります。

 レトルト殺菌で生き残る高温菌の中には、40℃以上で活発に増殖するものもいます。これまで輸送中に安全であった食品も、異常な高温による品質劣化の可能性は否定できません。食品搬送の際は、常温域(30℃)を超えない管理が必要ではないかと思われます。