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食品の衛生管理で求められる文書と記録


 保健所や取引先の監査を受ける際、必ずHACCPに関する文書類の作成状況や記録の内容についてチェックされます。

 これは、食品衛生法施行規則第66条の二③に記されている、「…次の定めるところにより公衆衛生条必要な措置を定め、これを遵守しなければならない。」と言う条文によるものです。

 そして、その「次のさだめるところ」とはこの4件です

 

一、食品衛生上の危害の発生の防止のため、施設の衛生管理及び食品又は添加物の取扱い等に関する計画(以下「衛生管理計画」という。)を作成し、食品又は添加物を取り扱う者及び関係者に周知徹底を図ること。

二、施設設備、機械器具の構造及び材質並びに食品の製造、加工、調理、運搬、貯蔵又は販売の工程を考慮し、これらの工程において公衆衛生上必要な措置を適切に行うための手順書(以下「手順書」という。)を必要に応じて作成すること。

三、衛生管理の実施状況を記録し、保存すること。なお、記録の保存期間は、取り扱う食品又は添加物が使用され、又は消費されるまでの期間を踏まえ、合理的に設定すること。

四、衛生管理計画及び手順書の効果を検証し、必要に応じてその内容を見直すこと。

 

 そもそも、この内容を定めているのは改正された食品衛生法で、第51条①に、「厚生労働大臣は、営業の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする。」とあります。

 具体的にこの定める内容とは、

一 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関すること。(一般的衛生管理)

二 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組に関すること。(HACCP)

 

 で、この厚生労働大臣が定めた基準が食品衛生法施行規則第66条の二の、最初に引用した③の前に記されています。

① 法第五十一条第一項第一号に掲げる事項に関する同項の厚生労働省令で定める基準は、別表第十七のとおりとする。

② 法第五十一条第一項第二号に掲げる事項に関する同項の厚生労働省令で定める基準は、別表第十八のとおりとする。

 

 この法文の内容を鑑みるに、私には厚生労働省HPで公開されている衛生管理計画のモデルがどうもピンとこなかったため、衛生管理計画書として別表17、18にある各項目について、自社の管理状況を整理することにしました。この様式はHACCPウェブ塾でも公開しています。

 この別表にある各項目について、どのように管理していくのかを定めておくと、あれもこれも作業マニュアルを書く必要がなくなり、必要な文書類が明確になります。

 

 別表17(一般的衛生管理)については、管理するためのルールとして必要な箇所に、規定や基準、手順書(マニュアル)を作りつければ良いわけです。あれもこれもと細かいマニュアルをいくつも作ってしまうと、帰って周知徹底が難しくなってしまいます。

 例えば、清掃マニュアルについて、器具を洗ったり、床や壁を掃除したりするマニュアルは詳しく作りません。清掃状況を記録する清掃チェックリストに、頻度と簡単な清掃方法、使用する洗剤などを記載しておくと、清掃のたびに確認出来て都合が良いわけです。

 ですが、機械の分解清掃の方法は、しっかり把握するまでは、マニュアルで確認しながらOJT教育を行う必要があります。

 分解の手順、部品の管理方法、組み立て方など、写真入りで初心者にも分かりやすい、注意すべき危険箇所も一目にわかるようなマニュアルを作成しておく必要があります。

 また、CCPに関わる作業手順、例えば金属探知機のテストピースのチェック方法や、反応品が出た際の確認・報告方法などは、分かりやすいマニュアルを作成して金属探知機の周辺に掲示しておく方が間違いありません。

 

 これも私的な文書区分ですが、規定類は会社として部署をまたいで処理する事項の取り決めとして作成しています。

 クレームや異常の処理については、発生箇所からの報告・連絡・確認・処置・対策と、処理にはそれぞれに実施する部署と内容を定めておくことが必要です。原材料や出荷する製品の流れ、健康管理や文書管理についても同じように管理規定を定めています。

 他に、数値で管理する事項については基準を作ります。温度管理基準や、原材料・仕掛品・製品の保管基準、薬剤の使用基準など。管理基準を明確にして異常値が出た時の対応を明記しています。

 

 外部監査を受ける際に注意しなければいけないことが、ルールの内容についてです。

 食品衛生法第51条②に、「営業者は、前項の規定により定められた基準に従い、厚生労働省令で定めるところにより公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない。」とあります。

 つまりは、自社で決めたルールの内容は、絶対守ってくださいよということです。厳しすぎるルールは、かえって自社の首を絞める結果になります。

 

 年1回会議を開いてHACCPシステムを検証し、ルールの見直しを行うと記入した場合は、その実施がわかる記録が必要になりますし、微生物検査で基準をきびしめに設定していると、検査結果が逸脱していた際に、安全である製品を自主回収する羽目になってしまいます。

 健康チェックリストに、毎日体温を記入するとルールを決めたなら、全ての出勤日に記載がされていることが必要になりますし、また、記入された体温が基準を逸脱していないかの確認や、その人が出勤か休みかの区別も確認出来なければいけません。

 外部監査では、このあたりで減点されることもよくあることです。

 

 私はこのホームページで自社独自の衛生教育用小冊子を作ることをお勧めしています。

 これは、別表17、18に規定されている項目で、従業員全員が守るべき自社ルールについて、分かりやすい小冊子にまとめて全員に配布するものです。そして、発生したクレームや事故などでルールを変更した場合、その内容も含めて年1回小冊子の内容を見直します。

 毎年、版を重ねて配布し、これを従業員に教育することで、従業員への教育関連の法的要求項目をほとんどクリアできるのです。

 

 ルールを決めて、それを従業員に守らせることは、容易なことではありません。

 しかしながら、この小冊子を作り、内容を遵守することの誓約をとることは、ルールの存在を明確にして、守ることの重要性を教育することに繋がります。

 ぜひ皆様にも作成していただきたいと思い、ダウンロード販売のサイトも作りました。ルールの作成についてはお手伝いもさせていただきますので、ぜひ取り組みをご検討ください。