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漂白剤入りの水で食中毒事故


 事故が発生した中華レストランでは、つゆをステンレスにプラスチックの持ち手がついた容器に入れており、これと同じ種類の小型の容器に飲料水を入れていました。

 このお店では、つゆの容器の殺菌は終業後に行うことが決まっていました。そのため営業中に容器に入っていた透明の液体を、飲料水であると勘違いして顧客に提供してしまったとのことです。

 

 私も監査員時代に同様の事故の改善確認に立ち会ったことがあります。

 その店舗でも容器内部を殺菌するため、次亜塩素酸ナトリウム製剤の溶液を容器に入れて放置していましたが、そのことを知らない他の従業員が、容器に入っている液体をただの水と勘違いして顧客に提供してしまったのです。

 別の事例では、次亜塩素酸ナトリウム製剤で殺菌後、洗浄不良で内部に殺菌液が残ったままのボウルで生クリームを製造し、そのクリームを使用したケーキを食べた顧客が、喉の痛みを訴えるという事故もありました。

 

 次亜塩素酸ナトリウム製剤は無色透明で、希釈液と水とは見た目で区別できません。

 作業中の厨房では複数の人が忙しく作業を行います。そんな中で、容器の中に次亜塩素酸ナトリウム溶液を溜めてで殺菌する行為は、取り違える危険が高く慎むべきで、容器の殺菌は全ての作業が終了した後におこなうべきです。

 特に厨房での容器の殺菌は、中だけに水を溜めて行うのではなく、容器全体を殺菌剤につけるか、高温の食洗機で洗浄する方法が推奨されます。そして、朝は浸漬殺菌したものを全て洗浄するところから作業を始めることが大切です。

 

 この事例の改善例としては、タレの容器が空になった場合は、食洗機で洗浄するかシンクに保管して終業後に次亜塩素酸ナトリウム溶液を溜めたバケツにつけるか、どちらもできない場合は終業後に内部に殺菌液を溜め、殺菌中であることがわかるように、例えばシンクの中に保管するとか、ビニール袋に入れて表示しておくなどのルールを決めて、全員に周知して実施をすることで取り違いの危険を減少することができるでしょう。

 

 それでも外観が同じ飲料水と次亜塩素酸ナトリウム溶液を取り違える危険は残ります。

 その危険を回避するために、飲料水の入ったポットから最初に水を提供するときは、事前に味見をすることが推奨されます。

 味見=官能確認はとても大切です。確認の方法は衛生的なルールを決めるべきですが、顧客に提供する前に毒味をする意味でも、最初の一杯を提供する前の官能確認が事故の防止につながります。