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外部監査の前に確認しておくこと


 これまでに多くの外部監査を受け、その後色々な施設の衛生点検を実施してきました。

 その中で、ここを対応しておけば減点を減らして評価を上げることができるというポイントがいくつかあります。それは監査の目的によっても少し違ってきますが、今回は保健所の食品衛生監視票に関する立ち会い監査についてお話ししていきます。

 

 食品衛生監視票は大手食品卸しやSM、学校給食関連などのお取引がある場合、定期的に提出を求められることがある証明書です。保健所に依頼すると、現場を監査した上で数百円レベルの手数料で書面を発行してくれます。最もお手軽に受けられる外部監査として利用されているところも多いのではないでしょうか。

 2021年6月にHACCPに基づく衛生管理が義務化になってから、この評価項目や評価基準が変更になっています。現在の評価内容について、詳しくは下のアドレス(厚生労働省HP:薬生食監発 0326 第5号 令和3年3月 26 日)をご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000760440.pdf

 

 保健所は行政処分ができる公的機関でもありますので、保健所が事業所に入る前には基本的なコンプライアンスの確認が必要です。

 特に営業許可が必要な業種では、作業場の改築やレイアウト変更などをした場合、作業場の営業許可が取れているか確認が必要です。許可外施設での製造は回収を指導されますので注意してください。

 営業許可外施設でも、改正食品衛生法が施行されて変更になった項目として、包装した常温保管商品を取り扱うのみの施設以外は、営業届出の義務があります。それに加えて「食品衛生責任者の選任」や「食品衛生管理計画書」が必要になりますので、あらかじめ対応しておきましょう。

 さらに、営業許可の再編により、許可内容が変更が必要になっている業種があります。適切な対応ができているか、確認しておきましょう。

 

 食品製造に使用する水の水質基準や産業廃棄物のマニュフェスト管理なども、自治体の指導に沿って実施していることを証明するため、必要な書類をまとめておきましょう。

 これに加えて、賞味期限管理も重要なチェックポイントです。作業場や食品保管施設に賞味期限を超過したものがないか確認しておきましょう。捨てようと思ってそのまま置きっぱなしになっている食品が見つかると、疑われて厄介なことになります。期限を明記していない仕掛品などについても適切な管理方法について説明できるようにしておきましょう。

 

 次に記録の確認です。ここで問題になるのが、すべての項目を正しく記入しているかということです。

 CCPのモニタリングはもちろん、作業日誌や、個人衛生のチェックリスト、清掃記録等等、記録していない空白があると減点されてしまいます。記録については結構細かくチェックされるので注意してください。

 CCPや温度記録など管理基準が決められている場合は、管理基準を逸脱した数値が記録され対応が明記されていない場合、管理状況について突っ込まれます。どのように対応したかを明記し、管理者が確認印を押すことで、正しい対応がされたことを外部の人にもわかる様にしておきましょう。

 

 記録への記入の際、誤った箇所を書きつぶしたり、修正テープなどで塗りつぶしたりしてしまうと、故意の改ざんを疑われます。

 書き間違えた場合は、通常二本線で消して、そこに修正印かサインをして実施者を明確にし、上部に正しい数値を記入するのが一般的です。

 修正テープは異物混入への危険を指摘されることがあるので使用しない様にしてください。作業場内に持ち込みを禁止した方が良い文具類として、修正テープの他、折れ刃カッター、ボタン型マグネット、小さいクリップ、ホッチキス、鉛筆・シャープペンシル、消しゴム、包材以外の輪ゴム、消しカスが出るホワイトボードイレイサーなどがあります。

 食品を取り扱う場所では、私物の持ち込みを禁止しているところが多くなっています。個人のバッグやポーチを作業場所に持ち込むと、コンプライアンス的にも問題があるからです。作業場所では作業に必要なものを必要な数配置し、在庫管理することが安全につながります。

 

 作業場所の点検の際は、作業場所に不要なものが置かれていないことが大切です。壊れた器具や汚れた書類など、異物や汚染の原因になるものは排除しておきましょう。

 壁や床に穴が空いていたり、下水につながる配管に蓋がされていない箇所があると、外部から衛生害虫やネズミが侵入する恐れがあるということで減点の対象になります。排水溝の汚れやグリストラップの詰まりも減点対象です。

 壁の穴はテープや薄い金属板で塞ぐなどし、作業場所の汚れた所を清掃しておきましょう。

 特に注意して確認してほしいのは、床に段ボールを敷きっぱなしにしていたり、食品や包材の入った段ボールケースを床や壁に接触した形で置かれていないかということです。これらも虫害や食中毒菌の汚染を受けやすいという観点で減点の対象になってしまいます。

 

 監査の前に衛生監視票の項目を一度確認しておくことは、自社の衛生レベルの確認になり、評価点を向上するためにも有意義なことです。

 現在対応できていない項目がある場合も、どの様な対策を取っているのか、また取る予定であるのかをきちんと説明できると、改善に向けた取り組みができていると評価してもらえると思います。

 外部監査は経営層や製造部門からは嫌われがちですが、外部監査で指摘を受けることにより、早急に改善につなげることができ、作業場の衛生レベルを上げることができます。外部から良い評価を受けることができると、自分達の衛生管理を認められることにより、作業者の自信にもつながり、会社の風通しをよくする原動力にもなります。

 外部監査を避けるために外部認証を取得する企業もありますが、私は、外部からの監査を積極的に受け入れ、監査に向けて準備や努力を続けることの方が、会社のレベルを上げることにつながると思っています。