いつものように、朝10時頃事務所に降りて行くと、事務の方が眉を顰めて言いました。
「今日、来客用出入り口のたたきに、小さい茶色いアリが一面にいて、一度箒ではいたんですが、すぐにまた這い上がってきたんで、蟻用のスプレーで殺虫しました。あんな多量のアリを見たのは初めてです。」
たたきを見ると、大量のアリの死骸が残っていて、生きたものは見られませんでした。
「今日はちょうど、防虫業者が作業に来る日なので、近くに巣がないか見てもらいますね。」と私。
その後やって来た防虫業者に、アリ事を伝えて確認してもらったところ、出入り口のすぐ横にアリの巣があって、多数の蟻が出入りしているのを発見したとのこと。
「巣のそばにベイト剤を置いたところ、すごい勢いで多量の蟻が群がってきて、あっという間にアリの山ができましたよ。」
と言って、撮った写真を見せてくれました。
「すごいね。ベイト剤って巣に持って帰って、巣ごと全滅させる事ができるんでしょ? ちょっとかわいそうだね。」なんて言ってその場は終わったのですが…
夜、NHKテレビで放送していた「“進撃の小さな巨人” 史上最強の侵略生物!? アルゼンチンアリ 」を見て、「えー!!」となってしまいました。
そのアリの特徴は、飴色、体調2mmくらいでばらつきがない、多量に発生、食欲旺盛…なんと今日、入口のたたきにいたアリとそっくりです。
私は生きているものを見ていなかったため、せわしく動くというアルゼンチンアリの特徴について、翌日防虫業者に電話で聞いてみました。
「テレビを見てすごく気になったんだけど、昨日のアリって、アルゼンチンアリじゃないよね。」
「アルゼンチンアリについてあまり知識がなくて、そんなこと気にしてませんでした。僕がとった写真では種の特定ができないので、近くにいるアリの写真を送ってもらえますか。」
そう言われてその辺りのアリを確認しましたが、在来のアリしか見られませんでした。
アルゼンチンアリが繁殖してしまうと、在来のアリは駆逐されるそうなので、あれはアルゼンチンアリではなかったようです。
色んな種類の在来のアリが行き交う光景を見て、なんだかとても安心しました。
しかしながら、お勤めしている事業所は、中国道のインターチェンジに隣接した流通センターの中にあり、倉庫会社が多く、コンテナ車が多数行き交っています。テレビで繁殖が問題となっていた伊丹市とも高速道路で30分程度という場所です。安心できる環境ではありません。
防虫業者にテレビで見た情報を一生懸命説明し、これからはアルゼンチンアリのモニタリングが必要なことを訴えて、対策を考えようと協力を求めました。
今はいなくても、いつ侵入してくるかわからない外来有害生物アルゼンチンアリ。
広域コロニーを作り、気づいたときには撲滅が難しい状態になっていると言われる強敵に対しては、無関心なのが一番いけない事だと思います。
外来生物だけではなく、戦争にしても、コロナにしても、嫌なことは見ないようにしたい気持ちは誰にもあります。
でも今ある危害を冷静に判断し、対応する事が大切だと、今回のアリがまた教えてくれたような気がします。
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