本来なら、この長い経過期間のうちに、使い切った包材から表示を変更していくことができたのでしょうが、私の勤める食品の小分け工場では、200以上のアイテムのうち未対応のものが1/4程度あり、3月は結構バタバタしてしまいました。
今回の表示方法で、「又は表示」、「大括り表示」の条件設定の困難さから、対応方法を検討する期間が必要であったことも事実です。
折しも、3月に始まったロシアのウクライナ侵攻により、市場にはロシア製品のボイコットがはじまっており、いきなり表示の変更に迫られているところもあるのではないでしょうか。
そもそも、小麦粉などを原料として使用する際の表示は、「小麦粉(国内製造)」で良いので、小麦がどこから輸入されたかは表示されません。ほとんどの菓子では砂糖が同じく国内製造となっており、今食べている食品に、どこの小麦やサトウキビが使われているかということは分かりません。本当のところ、この表示にどのような意味があるのかと考えてしまいます。
日本の農水産品自給率は低い状況が続いており、販売されている加工食品のほとんどに、輸入原材料が使用されています。
輸入食品の場合、国際情勢がモロに影響するだけでなく、相次ぐ気候変動の影響や、大規模火山噴火による影響の有無など、原産国変更の可能性は数え切れません。原料輸入を担当する商社や大手バイヤーなどは、その買い付けに苦労するわけですが、何かの事情で輸入先が変わる度に、原材料表示が印刷されている包材を変更をするとなると、包材プラスチックのロスや、費用の問題などが発生し、これが製品価格に影響を及ぼすことになります。
制度を決めた偉い方々はどのように考えておられるのか、下々のものには計り知れませんが、それだけ、消費者の食品に対する情報のニーズが高まっているということでしょうか。
そのことについては、日常のお問合せでも実感することがあります。
先日、とある消費者組合さんからのお問合せで、「有機食品に対する農薬の使用実績を明らかにするように」という要求がありました。
有機食品の認定については、日本農林規格が決められており、これは国際的にコーデックスのガイドラインに準拠しています。もちろん、外国から輸入される食品についても、このガイドラインに沿った規定で運用されていて、それぞれの国で格付けされた食品なのです。
有機といえども、農産物に重大な損害が生ずる危険が急迫している場合は、有機JAS法の別表2の農薬に限り使用することが許されています。別表2の農薬とは、天敵など生物農薬や天然物又は天然物由来のものから構成されているものです。
さらに、農薬の使用にあたっては、その圃場の認証機関が成分を調査し、使用を承認した場合に使用方法や実績の記録をして使用できるものなのです。
有機に対する認定は、かなり厳格なものなのですが、有機食品に対してこのような問合せがあるということは、どうしても信用できないということなのでしょうか。
農薬や食品添加物の使用規制や安全性の問題にせよ、税金で検査を尽くした科学的根拠により使用が認められています。しかしながら、そんなことより、天然や無添加という概念的な安心感の方が、より健康的と理解されるということでしょう。
誰もが陥りやすい誤解なのですが、数多の誘導的な商業的情報の中から、正しい情報を選択することは、本当に難しいことなのです。
コメントをお書きください