ある事業所で顧客からのクレームが発生し、それについて現場の検証をして、いくつかのクレームにつながる可能性を確認しました。
そこで、実際に作業をしている担当者に、クレームについて意見を求めたところ、客観的に出されたそれらの可能性について、いかに起こり得ないか、自分は関係してないかと言うことに話が進み、結果、自分たちの関与しない、機器の突然の不具合と、自分以外の人の見落としが原因ではないのかと言うのです。
実際のクレームは、重大な内容ではありませんでしたが、ひとつ違えば回収に至る事態にもなり得ます。機械の始業点検や清掃、メンテナンスを主として行う担当者が、突発的な誤作動であれ、機械の調子を見逃すのはいかがな物でしょうか。
担当者に話を聞く前に、「実際にクレームが起こっているのですから、どうしたらこのようなクレームを起こさずに済むか、対策を話し合いましょう。」とお話ししていました。しかしながら、何が原因であったのかわからないまま、最終的に、①機械の誤作動に気づいたら、商品の適合性を確認する。②検品者に不適合を見逃さないように注意する。という結論になりました。
これでは何も改善できていないのと同じことです。
クレームにつながる原因として考えられる可能性。これを憶測で消していったのでは、真の原因に辿り着けなくなってしまいます。可能性が考えられる要素は全て列挙し、その一つ一つに対策を決めることで、次のクレームを阻止できるのです。
このケースの場合、会話からわかる原因要素は、慣れた作業に対する注意感の欠如、自己判断の誤り、確認の怠り、事故に対する目測の甘さです。しかし、これは特別な、責められるべきことではなく、同じ作業を毎日こなす製造作業では、往々にして起こる事態なのです。
ですから会社としては、この慣れによる不注意に対して、チェックリストや内部監査で、社員の行動を是正しなければならず、何かクレームがあるたびに、チェックリストが増え、上司のお小言が増えるのです。そして、従業員は自分の責任をなんとか逃れようと、さらに無気力になっていくと言う負のスパイラルに陥ってしまいます。
私はこのような場合、危険予知訓練のように、全ての関係者にクレームにつながる原因を出してもらい、その全てに対策を立てて、それをわかりやすい図入りのマニュアルにして現場に掲示するようにしています。社員もパートもなく、全員の共通認識の上で実施する内容を決め、「同じクレームを起こさない」をスローガンとして、作業に意識を持ってもらう方法です。
もし、担当者が無意識で行動し、不適合品が生まれてしまった場合でも、その場にいる他者から正しい対応を指摘されると、我に戻ることができるでしょう。それでも間違えた判断をしようとしたら、誰かが現場の責任者に報告するようルールを作っておき、無責任な自己判断が横行しないようにすることも大切です。
誰もが良い商品を作るために一丸となれる職場は、風通しの良い場となるはずです。これを続けることで、働く人だけでなく、外部から監査に訪れる人にまで、改善が実感できる現場を作ることができると思っています。
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