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賞味期限と食品ロスについて考える


 穀物や大豆の品薄と価格高騰が問題となってから久しく、ますます状況は深刻になっています。

 今、私がお勤めしている、乾物品の卸及び小分け包装の会社でも、青のりや干えび、寒天など気候変動で取れにくくなってきた食材を含め、豆類やその加工品、及びごま類について、どんどん入手が困難になっている状況があります。

 輸出国の天候不順や、供給側であった中国で国内需要が高まり、強力に食品を輸入し始めるなどの要因が重なり、世界の農産資源は、望めが手に入るものではなくなってきています。一方、国内では農業人口の減少で、生産量は減り続けているのです。

 

 中でも、国内で生産された大豆や小豆などは、今や生産量も少なく大切な食品です。そもそも豆類は新豆だけでなく、ひね豆の方が美味しい用途もあります。私も保存サンプルで2年、3年前の豆を調理してみましたが、ほぼ味覚に問題ありませんでした。しかしながら、新豆が入荷しても、これを小分けして小袋に密封し、出荷する際には賞味期限を記載しなければいけません。

 メーカーにとって賞味期限は、期間内の食品の品質を保証することを意味します。昔は、新豆を購入しても、その保存方法や可食期間については、消費者自らが使用用途によって判断し、その経験的知識によって品質を確認して使用していました。今では「新豆」っと表示して販売するものについては、次年度の新豆が出るまでの1年程度の賞味期限が記載されます。新豆という特徴表示が次年度には誤りになるからです。

 食品ロス問題がクローズアップされて以来、賞味期限を超過しても食べられるものであることは、色々な情報発信で皆さんご存知でしょう。でも、小売店や製造業では、賞味期限が来た食品は、確実に廃棄されてしまいます。使えるからといって、店舗で販売を続けたり、期限の切れた豆を原材料として使用することはありません。もしそれが公表されることになると、社会的に大きく問題視される事が確実だからです。

 

 今話題の賞味期限の年月表記になったとしても、その状況は変わりません。今の賞味期限の設定方法では、年月表記の際、残りの日にちは切り捨てになるので、期間としては短くなってしまいます。

 品質に変化のない商品についても賞味期限が記載される理由として、商品へのメーカーとしての対応がいつまで必要かという問題があります。家庭での食品の取り扱いが「保存条件」通りであるかの保証はありません。そんな商品の品質を、ほぼ永遠に保証させられるのは困りものです。豆の賞味期限の設定根拠については、天然物であるが故の収穫地や収穫年による品質の差や、食べられるという感覚の個人差もあり、賞味期間の限界を設定することは困難です。それゆえに安全を考慮した結果、今の会社では包装して出荷に至る形態にした時点から1年と決めたのです。

 

 本来、このような品質の経時変化が少ない食品や、冷凍で温度管理して保管されているような品質変化が考えられない食品について、賞味期限を設定することは、食べられるものを廃棄することを意味します。むしろこのような食品には、メーカー保証期間を設けて、その後は消費者の裁量で喫食することを推奨するようにするのが適しているのではないかと私は考えています。

 小売店で期限が切れた食品がメーカーに返品された際、一定の期間内であれば食品加工業者に販売できるようにするとか、食品製造業が業者間取引で購入するものについては、賞味期限ではなく製造年月日の表示にし、各事業者で使用についての判断基準を設定する事ができるようにするなど、現在の期限日だけが最優先される品質判断を見直すことが必要です。

 

 今後、食料の世界的な供給はもっとタイトになり、日本のような食物の自給率の低い国は、食料問題に直面することが必至でしょう。

 自国で取れた大切な食料を廃棄しないため、法律の改正は必ず必要であると、食品業界の末端で働く者として実感しています。