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琵琶湖ホテルのパンについて考える


 ニュースで説明されていた内容は、食品が到着してすぐ冷凍したパンを、表示された消費期限から34日過ぎた段階までお客さんに提供していたというものでした。

 パンの消費期限は、表示された保存条件で保管された時に、安全に食べる事ができる期間です。しかしながら、この副料理長さんは、パンを入荷後すぐに冷凍したのです。

 パンは焼成後から老化が始まるため、美味しさが失われていきます。これを防ぐためには冷凍する事が最も良い方法と言われています。

 また、パンの劣化の原因として、カビの発生がありますが、これも冷凍する事で防ぐ事ができます。つまりはパンを長期に保管するためには、冷凍する事が最も適切と言えます。

 

 それでは、何故ホテルはパンを34日間も保管しなければいけなかったのでしょうか。もし、ホテルのパンは特別仕様のもので、パン工場に依頼して製造してもらっていたとした場合、最小ロットでもかなりの数量を発注する必要があります。その場合だと、それを冷凍保管して解凍しつつ使用する理由になるかもしれません。

 問題は、冷凍保存することではなく、原材料の管理ルールを決め、そのルールで運用した場合、ホテルが提供するべき品質を守っていることを証明する科学的根拠を持っていなかったことです。

 

 今回の場合なら、パンの保管基準として「当日使用する以外のパンは凍結日を明記した上で凍結保管する。凍結したパンは凍結日を含め40日以内に使用する。解凍したパンは当日中に使用し、再凍結禁止。」というルールとした上で、冷凍40日後に官能検査し、品質的に問題ないことを検査結果として、文書としてもっておくことです。

 また、冷凍庫の管理温度を決め、温度管理を1日3回確認し、記録をつけておくことです。冷凍庫が管理温度を逸脱した場合の処置を決めておくことも大切です。これでこの保管条件の正当性を証明できまるので、きちんと説明できると、保健所からいろいろ言われる事がなくなります。

 

 日本では食品衛生法の改正で、HACCPが義務化されています。このホテルでHACCPを理解し、取り組む事ができていたら、由緒あるホテルの名前に傷をつけなくて良かったと思うと、残念でなりません。

 食品の管理方法については、それにより食品由来の危害が発生する場合は問題です。しかしながら、このパンの保存については、何の危害もないですよね。