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ゴキブリの動向も防犯カメラで解析できる


 今お勤めしているのは、乾燥した農・海産物、およびその乾燥した加工品を小分けする工場で、有機の認定を受けています。この工場では以前から、ゴキブリの生息痕が多数みられていました。ですが、ほとんど対処していなかったようで、掃除委託業者の方から、「この会社はゴキブリが多いよ」と言われる状態でした。

 

 有機の認定を受けている工場では、食品の有機性確保のため、法律で使用を許可された薬剤(天然物質主体のもの) 以外使用することができません。薬剤を使用する場合は認証機関に届けを出し、承認を得る必要があります。もちろん、ゴキブリのような大きい昆虫を殺す効果がある、残留性がある強い薬剤は使えません。

 そのため、有機の認証を受けた工場での防虫管理はかなり制限されてしまいます。以前にもブログに書きましたが、地道な清掃と侵入口の塞ぎ込みが、防虫対策として最も重要になります。そして、これはとても大変な仕事ですので、放置したままの施設も少なくない状況です。

 

 この工場でゴキブリが出るのは、場内に一か所だけある洗浄室です。乾燥食品を扱う作業場内には水道設備がなく、この洗浄室に手洗いシンクと器具の洗浄シンクがあり、洗濯機、ジェットタオル 、掃除用具ロッカーなどが置かれています。

 私のゴキブリ との戦いは昨年の夏期からです。この会社の専務が夜間に工場に入った際、洗浄室の灯をつけると、洗濯機の排水口から多数のゴキブリが出てきたという話から始まりました。

 洗濯機は週1度程度しか使わず、洗浄シンクの足元に敷くマットを洗浄する目的のみで使用されていました。長年清掃したことがないという、洗濯機パンの排水口の蓋を開け、ワントラップを洗浄しましたが、それほど汚れが溜まっている様子ではありません。しかし、洗濯機の排水ホースを排水口から抜いた際、その中から多量のゴキ糞が落ちてきました。

 洗濯機が巣になっていると疑われたため、洗濯機をビニールで密封し、その中で有機認証された燻蒸殺虫剤を使用したところ、7匹の成虫の死骸が確認されました。その後この洗濯機は撤去し、マットは廃止しました。

 

 次に取り組んだのが、エアータオル。毎日掃除しても、機械の排水受けにゴキ糞が見られるのです。エアータオルのメーカーに、機械を壁から外す方法を問い合わせて、外してみたところ、機械裏の壁に配管を通すための直径10センチ程度の穴が開いていて、その穴の周りにゴキ糞が多数付着していました。

 この穴は、機械を据え付けたときにコードが出入りする関係で、密封することができません。極力塞いでみましたが、その後も排水受けに糞が続きます。そこで、ジェットタオル 自体をビニールパックして燻蒸したところ、数匹の成虫の死骸が確認されました。今このジェットタオル は、コロナの影響もあり、ずっとパックしたままになっています。

 

 他に、新しいゴキ糞が毎日落ちていたのが、手洗いシンクの蛇口台です。シンク下のバケツにも多量の糞がありました。そこで、シンク下部分の配管の隙間を全て埋め、ビニールで覆って燻蒸しました。捕獲されたのは成虫2匹程度でしたが、ここも営巣箇所であったことは確実です。

 

 ここまでしても、どうしても手洗いシンクのゴキ糞がおさまらず、次の一手に苦慮していたところ、専務さんから、「防犯カメラが洗浄室にもあるから、録画した画像にゴキブリが写ってるかもしれないよ。」と提案されました。録画画像を見てみると、夜8時頃からゴキブリの動きがあり、物陰で見えにくいものの、大体の動きが把握できます。

 一番多くの出入りが見られたのが、出入り口の外に置かれた掃除ロッカーと、出入り口壁の間です。後日このロッカーを動かしたところ、4匹の成虫が発見されました。この時、躊躇なく手で捕まえることができる協力者がいることが、最も重要なことです。逃してしまっては台無しです。私はどうしてもゴキブリ に触れることが無理なので、協力者がいることに本当に感謝です。

 その後、出入りの姿が確認された、洗浄シンク下を掃除し、ビニールをかけて燻蒸しました。ここでは捕獲はありませんでしたが、燻蒸を始めたところ、成虫が3匹、それぞれ違うところから出てきました。その箇所にはわずかな隙間があり、それを全てパテで埋めました。

 

 ここまでの処置で、今のところゴキ糞は見られなくなっています。防犯カメラの映像にもゴキ影は写っていないので、一応追い出しに成功したと言えるでしょう。

 このように対応できるのは、捕獲されるのが黒ゴキブリだったからです。黒ゴキブリ は外部からの侵入がほとんどです。侵入して営巣しているので、今シーズン工場の中に居る全ての成虫を排除できたら、来シーズンに今の幼虫が成虫になる前に駆除すると抑えられます。

 これがチャバネゴキブリの場合はかなり厄介です。薬剤に強く、冷蔵庫のパッキンなどのわずかな隙間で繁殖を繰り返すので、特に有機認定工場の場合、根絶するのは困難です。この場合は、ゴキブリの駆除に精通した業者に任せるほかありません。

 

 ゴキブリ。昆虫の中でも、この虫ほど世間で嫌われている者はいないでしょう。その存在感や見た目で、食品製造の場に最も居て欲しくない昆虫です。

 私はずっと以前、喫茶店で注文したチーズケーキを食べる前、なんとなく底を見た時、大きい黒ゴキブリの死体が貼り付いていたという経験があります。このトラウマのため、このチェーン店には2度と行くことができません。

 一昔前は「ゴキブリがいる店の方が美味し」いなどと言われました。ですが、今ではそんなおおらかな消費者は存在しません。ゴキブリが多い店は、確実に敬遠されてしまいます。

 

 その気になれば、どんな施設でも、彼らを排除することはできないことではありません。

 彼らは寒くなると活動を停止してしまいます。ゴキブリの根絶は、暑い季節にしかできないことです。もし、ゴキブリの形跡が続いているようでしたら、一度、夜の彼らの状況を、防犯カメラのモニターで確認されてはいかがでしょうか。もちろん、ネズミで苦慮されている方にもお勧めです。