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「HACCPに添った衛生管理の制度化」が施行されました


 2020年6月1日から「HACCPに添った衛生管理の制度化」が施行されました。(1年間の経過措置があるため、実質的には2021年6月1日が完全施行日です) 

 私の勤め先では、先日来、原材料規格書の年度更新を実施しています。今回、HACCPへの取り組み状況を尋ねる欄を加えたのですが、未実施の会社が多くて驚きました。

 特に農水産物の乾物という加工品を取り扱う業態は、規模の小さい事業者がほとんどです。「取り組む予定はありません」という所に、「これは法律で決まったことなので、取り組んでいただかなければお取引できなくなってしまいますが…」と説明し、ご理解いただくのに大変でした。

 

 今回の法施行においては、飲食店や小規模事業者への取り組み推進が大きい問題になりました。

 結局、各業界団体が小規模事業者向けの手引書を作成し、それを厚生労働省がチェックして発行することになったようです。

 この6月1日にやっと出た「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」では、地方自治体が主になって監督するにもかかわらず、地方の特色を加味した指導方針は認められず、自治体が作成した手引書も厚生労働省の認可が必要だということです。

 手引書の内容について、私は、記録が「○×」なのが気になります。監査の対象になる記録の項目に、管理できていない事を示す「×」を記入する事はないでしょう。何だか間に合わせ感が否めません。これで本当に安全安心につながる記録になるのでしょうか。

 せっかく法律ができて、新しい衛生管理に取り組むのです。記録については、自社の裁量により、意味のあるものにする努力を考えましょう。

 

 今回の食品衛生法改正に関する、厚生労働省の講演資料の中で気になったのが、「衛生管理の基準の解説」一般的な衛生管理に関する基準4の使用水筒の管理の項目です。

 食品、添加物に使用する水として、以前は「飲用適の水」という表現でしたが、2009年に「食品製造用水」(水道水もしくは26項目の検査を行った水)という表現になり、今回の衛生基準では、これに加えて「飲用に適する水」が規定されています。

 この「飲用に適する水」は食品製造用水とは異なる水で、検査を行う必要はあるけれど、頻度や項目は現行の通り地方自治体に任せるという内容になっています。

 実際に、水については自治体で取り扱いが様々です。昔から名水と言われる湧き水を使用しているところでは、殺菌の概念はありません。水の味にこだわって営業を続ける店舗では、一律の基準を受け入れることは、事業の存続の危機を意味します。日本の食品産業は歴史が古い企業も多く、伝統の味を守り、衛生的な管理も充実させるとなると、個別の対応が必要になります。

 今、厚生労働省や自治体の保健所は、コロナウイルスと戦いながら、法改正に関するHACCPの指導や対応を行わなければならず、どんなにか大変なことでしょう。本当にあと1年で法制度が行き渡るのか心配です。

 このコロナ禍の中、食品関連企業としてできること。先ずはHACCPを知り、自社がより良くなるために、今取り組めることを積極的にルール化し、記録を作りましょう。これは、ウイルス対策にもなり、自社の営業努力をアピールできる機会にもなることは間違いありません。