私が子供の頃、祖母からよく「食事中に話をしてはいけない」と注意されたものです。もちろん、食べ物を口に入れたまま喋ると、食べ物が飛び出して汚いという理由からだと思います。しかしながら、「黙って食べる」というスタイルは、昔の人が多くの感染症を乗り越えるための、生活の知恵だったのかもしれません。
当時、私の家では家族それぞれが箸箱を持っていて、食後はお茶で箸を洗い、紙で拭いて箸箱に戻し、また食事の時に使っていました。さらに、食器に口をつけて食べることも、御行儀が悪いと言われたものです。
今では食事中の会話を楽しむ西洋風のスタイルが主流となりましたが、古来日本では、箱膳に食器を配膳し、ある程度の間隔を持って並んで食べていました。食べるタイミングも、主人、家人、奉公人と、場所や時間を分けていたようです。
これらはかなり昔の話ですが、今考えると、このスタイルは感染症対策として大変理にかなっていて、今後の感染症リスクを防ぐためのヒントがあるのではないかと思います。
飲食店での感染対策として、最も重要になるのが唾液に含まれるウイルスに対する対策です。今回のコロナウイルスの場合、健康感染者からの唾液飛沫による、三密環境での感染拡大が重視されているからです。
飛沫が発生するのは、食事をしている時ではなく、話をしたり、咳やくしゃみをした時です。
ポスターなどで食事中のおしゃべりを止めましょうとアナウンスすることも大切です。話すときにはウエットおしぼりやペーパーナプキンで口を抑えるなど、エチケット教育も大切になります。
使ったウエットおしぼりやペーパーナプキンを、そのまま放置することは危険です。ビニール袋をテーブルに置くことで、各自袋に入れてもらうようにできると、片付けるときに汚染を広げなくて済みます。
テーブルにアルコールスプレーを配置して、都度、手やテーブルを殺菌してもらうようにすることも有効です。
食後、食器に付着した唾液も、ウイルスの感染源になります。
リターナブルな箸やカトラリーは、この時期、割り箸や使い捨て可能なものに切り替えることが推奨されます。これも、使用後にビニール袋に入れてもらうと、下膳時の担当者の危険を減らすことができます。
下膳後の食器は、殺菌剤入りのシンクに浸漬し、残渣を流してから高温の食器洗い機で洗浄すると良いと思います。
3蜜を防ぐため、空気の流れにも気を配る必要があります。
ほとんどの施設では、調理中の匂いや熱気をホールに出さないよう、厨房内に換気扇があり、ホールの空気が厨房に流れ込むようになっています。
ホールで発生するウイルス飛沫を最短で外部に逃すためには、ホール側にも排気設備を設置し、積極的に窓を開けるなどの換気対策が重要です。また、厨房とホールの間にシールドをつけたりすることも、作業者を守るために必要になるでしょう。
これからしばらくは、飲食店で働く従業員のマスクや手袋、殺菌用アルコールは必需品になります。これがなければ戦えません。調達が生き残りの鍵になるでしょう。
これをつかい、どうすれば顧客を守り、従業員を守り、店を守れるか。他店に先んじて考え、実施し、発信することが、パンデミック後の経営に欠かせない武器になります。
今、考え、準備することが必要なときです。
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watanabe (火曜日, 05 5月 2020 10:23)
よろしくお願いします