2ヶ月前から食品加工工場の品質管理としてパート勤務しています。この会社ではJFS-B規格取得のため、大手防虫会社にのコンサルを発注していました。
ですが、コンサルタントからほとんど書類が完成したという報告を受けた状態で、新規取引先の監査を受けたところ、いくつも不備を指摘され不合格になってしまったということです。そのため、このままではいけないということになり、もう一度仕切り直して再度挑戦することになりました。私はその改善要員として雇われたというわけです。
そして、先月、再開した1回目のコンサルタントによる講習会に出席しました。
先ず、講師はHACCPの概要について、簡単な例で説明しました。例となる製品は「目玉焼き」。その製造工程における危害分析をするのですが、粉末や乾燥した食材の小分け包装のみを行うこの工場で、他に食品製造の経験もない男子従業員には、目玉焼きの製造工程上の危害などわかるはずがありません。
彼らはHACCPに対する基礎知識も持ち合わせていないので、唐突に目玉焼きを作って金属探知機に通すと言われても、卵を割ってフライパンで焼いてパックする工程で、どこに金属異物混入の機会があるのか、あまり理解できなかったのだと思います。
講師は、目玉焼きの危害分析のざっとした説明の後に、今回対象となる製品を決めさせ、その製品の聞き取りをしました。「乾燥した食品」で、「そのまま食べる食品」であるため、病原性微生物の中で、乾燥に強く少量の菌で食中毒に至る恐れがある、サルモネラ菌が生物的危害の対象となるということでした。
次に、フローダイアグラムを口頭聞き取りで作成しました。私の経験では、食品衛生に関する知識を持ち合わせない人に「製造工程を挙げてください」と言って、最初から危害防止に関わりのある工程を、全て挙げられる人はほとんどいません。特に、ライン内のフィルターやトラップ、包装時に使用する品質保持剤などは出て来にくい傾向があります。
7原則ではフローダイアグラムの現場検証を実施することになっています。ですがこの時は現場検証はしませんでした。その場で挙げられた製造工程に対して、考えられる危害要因をその場で列挙ました。
講師は「危害は人の身体・生命に障害を与えるもの」と限定し、ノロウイルスやカビは危害に入らないが、金属片は重要な危害だと事前に説明するのです。受講者は最初から、加熱工程がないのなら、CCPは金属探知機だと刷り込まれています。
その後、出された危害について、その重要性の判定をし、金属探知機の工程をCCPと決定して、検証や改善対策を決めるという流れで講習は進みました。そして、そのまとめが宿題になったわけです。
まとめる段になって発覚したのですが、その製品は包材がアルミ蒸着フィルムの袋で、非鉄の脱酸素剤が入っていました。どちらも金属探知機を使用することは可能ですが、かなり性能の高い金属探知機が必要になります。ですが、どう見ても今工場で使用している金属探知機は、かなり古いもののようです。
作業担当者に現在金属探知機で使用している、感度確認のテストピースのサイズを聞いたところ、「金属探知機はメーカー指導の設定ナンバーで使用しているが、テストピースの確認は実施していない」というのです。案の定、その設定ナンバーは金属探知機をスルーさせるための設定で、ただのベルトコンベアーとして使用していたというオチでした。
調べると、取引先に提出していた工程表では、金属探知機を使用していないことが明記されていました。
製造工程を最初に作った人は、金属探知機が作動していないことを知っていたようです。しかしながら、作業者が交代した際、特に教育や申し送りもないままになっていたため、現在の担当者は、金属探知機を通過させていることで、金属のスクリーニングがなされていると思い込んでいたようです。
コンサル回数の関係で、HACCP1日、一般的衛生管理1日で講習終了です。コンサルタント会社から、汎用性のある簡単な基準やマニュアルを文書化したものをもらって、それで認定がもらえるのなら、そんな規格は何の役にもたたないことは明白です。
それに、危害の要因になるものは金属異物だけではありません。プラスチック片だって、ゴキブリだって、ノロウイルスだって、人の健康被害につながるのです。ノロウイルスは症状が軽いから死者が出にくいとはいえ、高齢者や幼児では何が生死に関わるかわかりません。それだけでなく、このようなクレームの発生は、会社の存亡に関わる大きな問題に発展しかねないのです。
そんな、クレームにつながる危険がどこにあるのか、どうすればその危険から逃れることができるのかを、担当者が理解して危害分析をしなくては、そこにある危険を回避することはできません。
そのためにも、工程のフローダイアグラムを作成したら、それを現場で検証することがとても重要です。そして現場検証の際、衛生に関する知識の乏しい受講者に、コンサルタントは何を見落としてはいけないのか、どんな管理が重要なのか指導することが必要になります。いかにコンサル回数が少なくても、それを飛ばしてはいけないのではないでしょうか。なぜなら、初めて危害分析に取り組む彼らは、普段の仕事に慣れているため、何が危害なのかわからないのです。
私は、この会社では週4日勤務のパートのおばさんです。色々な制限のあるこの会社で、ここからどのように、有効で会社の押しになる食品安全を作り上げていくか。楽しみであり、苦行でもあります。
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