梅雨時期になり、気温や湿度が一気に上昇し、ゴキブリなどの衛生害虫が活発になる季節が到来しました。あなたの事業所では、衛生害虫の発生状況はいかがでしょうか。
「食品企業なんだから、ゴキブリくらいいますよ…」という事業所も少なくありません。しかしながら、あなたが害虫がいても我慢できるタイプでも、お客様にまでその不衛生な状況を、押し付けるわけにはいきません。食品企業である以上、とにかく、虫を撲滅することが必要です。そのためには、先ず不要な物を片付けて徹底的に清掃すること。そして外からの侵入口となっている隙間を埋めることが重要なのです。
食品を扱う企業では、異物混入や食中毒菌の伝搬につながる、衛生害虫の撲滅は重要な管理項目の一つです。衛生害虫がらみのクレームで最も厄介なのが、ゴキブリの食品への混入です。消費者が購入した食品の中からグロテスクなこの虫が見つかると、テレビや新聞に取り上げられ、大騒ぎになって株価まで下がった例もあります。
ゴキブリ類は、関西圏では黒ゴキブリとチャバネゴキブリが主流です。ほとんどの場合、前者は外部侵入、後者は場内発生であることが知られます。
以前勤めていた食品工場で、一時期、作業室外周の通路でゴキブリの目撃が続いていました。工場は、大型のプロセスセンターの中に間借りしていたのですが、建屋はすでに経年劣化が始まっていて、壁の鉄骨の柱と床の間に、錆びによる隙間が発生していました。どうもこのあたりで目撃が多かったので、隙間にエアゾルを噴霧したところ、大小合わせて十数匹のゴキブリがぞろぞろ出てきて大騒ぎになった経験があります。
その前にいた工場では、2階の床下の隙間に大量のゴキブリが住んでいて、それをネズミが追いかけていました。ゴキブリの糞にハエの羽や小さい足が、ネズミの糞にはゴキブリの羽や足が見られます。工場内でそんなワイルドライフが繰り広げてられているなんて、どれだけ危険な状態でしょう。ゴキブリの形跡を見かけたら、とにかく急いで対策をとらなければいけません。
黒ゴキブリ対策は、とにかく外部からの侵入経路を断ち、内部の成虫を殺虫することが大切です。ゴキブリは下水管や、温かい外壁と内壁の隙間などに生息しています。まず、壁や床に開いた穴や隙間を塞ぎましょう。次に下水と直結している排水口を清掃して、トラップがちゃんと機能していることを確認してください。
排水溝のトラップには、ワントラップとPトラップがあり、封水で下水から虫や臭いが上がってくるのを防止しています。ですが、トラップにゴミや汚れが堆積したり、封水が干上がったりすると、トラップとして機能しなくなり、虫が通り抜けることができるようになります。下水の臭いが上がってくるようなところは、このような状態になっている可能性があります。排水管の高圧清掃や、トラップの確認が必要です。
穴や隙間はパテで埋めましょう。工場内では、配線の通る管や配電盤など、少し温かい場所をゴキブリは好みます。配線を通す穴と配線の隙間は必ず塞いでください。最近のパテ剤は、用途に合わせたとても扱いやすいものが販売されています。床や壁のクラックや、壁に開いた穴には、穴埋めシートをパテで塗り込めて塞ぐリペアプレートが便利です。
隙間という隙間を埋めたら、あとは燻蒸殺虫剤で定期的に数回殺虫し、成虫や幼虫を撲滅しましょう。
一度撲滅しても放置しては元の木阿弥です。環境やトラップの適切な清掃頻度を決め、チェックリストを作成して確実に実施しましょう。防虫効果を上げるために、ベイト剤を設置することも推奨されます。
場内で発生するチャバネゴキブリには、徹底的な清掃が欠かせません。機械のモーター部分や発熱箇所の近辺など、温かい場所に付着した汚れや糞を、徹底的に清掃して除去しましょう。ベイト剤や燻蒸剤など、専門家の手を借りた方が早く没滅できます。信頼おける業者に相談してみてください。
また、効果を持続するためには、作業環境の十分な清掃を続けることが大切です。作業場内に保管するものを最小限にし、床に近い位置に食品や器具を置くことをやめましょう。床や壁に接触した形で機器や什器を置かないことが、清掃をしやすくするために大切です。
床や壁は泡洗浄することで、ゴキブリやコバエの防虫効果が期待できます。泡洗浄は水道の圧力で洗剤を発泡するものや、手持ちの圧力容器で噴霧するものも販売されています。排水溝のグレーチングや側壁を含め、泡を噴霧して20〜30分おき、汚れている部分はブラッシングして水で流すだけで、カビやぬめりも防止でき、チョウバエの対策にもなります。
衛生的な環境を手に入れるためには、行動しなくてはいけません。
「お仕事は製造のみで、清掃は最低限…」では、衛生害虫のワイルドライフを応援するようなものです。虫の混入で大変なクレームになる前に、適切な方法、適切な頻度の、徹底的な掃除と隙間埋めを行ってください。
コメントをお書きください