ゴールデンウイーク開けから、近所の食品加工工場に品質管理のパートとしてお勤めしています。
HACCPの本を書き終え、もう一度それを実践できるお仕事を探そうかと思っていた矢先に、偶然、HACCPを構築するための補強要員の求人広告があり、週4日のパートとしてお勤めすることになったのです。
この工場では、乾物食品の小分け包装を行なっていて、スーパーなどに出荷います。大口の取引先の某生協様の要望で、JFS-B規格の認証取得を目指すことになったのですが、大手防虫会社のコンサルタントを受けて、ほぼ完成した段階で受けた取引先の監査で、散々な評価を受けてしまったそうです。これではいけないということで、最初から仕切り直すことになり、HACCPに詳しい人を募集していたのです。
仕切り直し初回のコンサルタントミーティングに出席しましたが、コンサルタントが提示するデフォルメされたHACCPは、認証取得はできても取引先の評価には繋がらないだろうなと再認識する内容でした。
大概のHACCP指導者は、HACCPは食品の安全を対象としていて、品質には関係ないと思っています。また、「食の安全安心」の「安心」については消費者が感じるもので、製造の場で重要なのは「安全」だと言われます。
私はこれまで、食品企業でHACCPを使って、工場の環境や製品の品質改善に取り組んできました。HACCPは食品企業の改善に適したツールであり、このツールを使って得られる最も大きいメリットが、安定した「品質」であり、取引先や消費者に向けた「安心」の「見える化」であると思っています。
「安全」なのは食品を取り扱う企業として当たり前のこと。いかに、取引先の監査で具体的に「安心」していただくかが、次のお仕事につながり、企業として取り組むメリットとなるのです。
つくづく感じるのは、「改善するには企業内部にいなければいけない」と言うことです。その点が、コンサルタントでは行き届かないのです。
実際に、食品企業はほとんどが中小・零細規模です。そのため、それぞれ色々な問題を抱えています。コンプライアンス的な整備も、遅れているところが少なくありません。つまり、改善の核になるところは、外部者には見せられない部分なのです。
しかしながら、そんな企業がこれから業績を伸ばしていくためには、取引先に安心を提供できることが不可欠です。そして、そのための改善に正しいHACCPへの取り組みが近道になります。
もし、社長に本当に改善する意思があるのなら、コンサルタントに全て任せるのではなく、取り組む自分たちが正しいHACCPの知識を持っていることが重要なのです。
コンサルタントに認証を取らせてもらっても、コンサルタントの設計した安全が社内に理解されていなければ、監査の際に高評価は得られません。ですが、JFS-B規格を取得すると、取引先の監査が免除されると言うことで、取得しようとする企業が増加しているそうです。
民間の認証では、その認証の品質は認証を担当する企業に任されています。認証を担当する会社にとって認証を受ける会社は取引先であり、一度認証を受けた会社の認証を取り消すなどと言うことはほとんどありません。そのため、通常、認証の品質は経年劣化していくことになります。
それなら、取引先による監査を定期的に受け、外部監査による指摘を受けて社内を改善していったほうが、会社としてはメリットがあるだろうと私は考えています。
前職のコンサルタント会社で、食品工場の衛生点検の仕事をしていた際、進んだ衛生管理を行っている企業では、「どんどん指摘してください。うちは外圧で伸びる会社ですので。」と言われます。
私が工場の品質管理をしていた時もそうでしたが、外部監査を受けることで、同業他社の中で自分たちの会社がどの程度評価されるのかを知る機会が大切なのです。
HACCPが義務化される前に、先ずは自分の企業に適したHACCPを自社で構築してみることをお勧めします。そして進んで外部監査を受けましょう。そのためには、先ず、自社のコンプライアンスの確認をしてください。
コンプライアンスを無視し、わずかな得のために法的に突っ込まれる部分を残しておくことは、会社として絶対得になりません。むしろ、その部分を改善することにより、取引先の信頼を得ることができ、会社の利益につながることになるのです。
私も非力ながら、少しでもわかりやすいHACCPの取り組み方法を提案したいと思い、「転ばぬ先のHACCP」を Kindleで販売しています。このHPでも、使いやすいコンテンツを提案していますので、皆様が取り組む際の参考にしていただけると幸いです。
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