先日、山口県の食品スーパーマーケットチェーンで、米飯製品に金属異物が混入している可能性があるという回収広告がありました。対象は、同社および系列スーパーで、朝一番から正午までに販売された、米飯を使用した製品全て。使用した米飯を製造した、同社の子会社である炊飯工場で、金属製ボルト 長さ19mm×横10mm及びワッシャー 直径10mmが混入した疑いがあるためと言うことでした。
弁当に使うのはホットの白飯。寿司に使うのは、炊きたての白飯に調合酢を噴霧して撹拌し、空冷した「舎利」と呼ばれる酢飯で、工場から炊飯ボックスに入った形で納品されます。
今回異物混入があった炊飯工場では、2004年にHACCP認証を取得しています。その認証が、炊飯HACCPなら、ほとんどの工場では、重要管理点が金属探知機になっているので、ご飯がボックスに入る前の取り出しコンベアーと、ボックスに収容した後に、金属探知機を通過させています。それなのに、なぜボルトやワッシャーという大きい金属が通過してしまったのでしょうか。
私も米飯工場の品質管理をしていたので、経験がありまが、炊飯製品の金属探知機でのチェックはとても大変なのです。
金属探知機は熱いものや、厚さが均一ではないものに対して、感度が悪く、誤作動を起こしやすいという特徴があります。まさに、水蒸気をあげながらコンベアーを通過するホットの白飯や、撹拌機を通過した酢飯は、そのどちらにも該当し、誤作動を起こしやすいのです。
米飯ラインでは、金属探知機が金属反応を検知した場合、コンベアーが下向きになって、異物はご飯と一緒に下に受けているボックスに落ちる仕組みになっています。
本来は、反応があった場合はすぐに不適合品を確認するべきですが、しょっちゅう誤作動でパタパタコンベアーが作動するのに作業者が慣れっこになってしまうと、一回ごとにラインを止めて確認するということをしなくなります。
ボックスに収容した後に再度金属探知機を通過させるため、安心しているということもあるかもしれません。
しかしながらボックス製品の場合、内容物の厚さが災いし、感度的にはかなり大きいものしか検出できません。特にステンレス製のボルトやワッシャーでは、混入角度によっては、検出できない場合があるかもしれません。
今回の場合、炊飯がすべて終了して、作業者が金属探知機の反応品を確認した際、ナットが発見されたのではないかと考えられます。機械のネジはボルトとワッシャーとナットがセットで使われています。炊飯ラインにボルトが外れた箇所が発見されたため、ボルトとワッシャーの紛失に気づいたということではないでしょうか。
私も同じような経験があります。唐揚げのプリフライを作っているラインで、製品からボルトが発見されました。いろいろ探した結果、フライヤーのカバーを止めていたボルトが抜けていたのですが、ワッシャーとナットは清掃不良でコテコテに固まった油の中にあり、落下していなかったという笑えない話です。
もう1つ、私には忘れられないボルトの異物混入事件があります。
ミンチカツを作っているラインで、工務担当者が調子の悪いパン粉付け器のコンベアーの駆動部を修理する際、外したボルトを駆動部のボックスに置いたままラインを再スタートしてしまったのです。コンベアーの振動でボルトがパン粉に落下し、製品に混入してしまいました。製品は冷凍され、包装前の金属探知機で検出されたのですが、作業者がその検出品を成形不良のバンジュウに入れた為、成形手直し後に良品として出荷されてしまったのです。
当時、その製品はコンビニ弁当に採用されていました。大手ベンダーでは原材料受け入れ時に金属探知機での確認を実施しており、その際ボルトが検出されたのです。その時点で全ての製品が返品になり、コンビニからはお出入り禁止になりました。
実は、その前の時点で、金属探知機の不適合品に関する取り扱いルールは決まっていました。もちろん、機械の上に物を置かないルールもありました。これは、全ての従業員が危害を甘く見積もっていた結果です。教育が徹底できていない私の落ち度もありました。
このような事があると、自分たちの甘さに気づくのですが、事なく仕事が進んでいると、それがどんなにラッキーなことの積み重ねかわからなくなってしまいます。
私にとっては忘れられない、不適合品の扱いには、特に注意が必要だという教訓です。
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