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新表示法まで後一年です


 この表示法の改正では、言葉の表現や記号など、いろいろ細かいルールが決められたため、表示を作る側にはとてもややこしいことになっています。何がどんな風に変わるのか、一部をご紹介します。

 

 まず、「原材料名」の添加物の表示方法が変わります。いままでは、原材料を重量順に記入した後に、続けて添加物を含まれる量の多い順に記載していました。新表示法では「添加物」の欄を設けるか、原材料名の欄に続けて表示する場合は、添加物の前に「/」や改行で、明らかに区切って表示することが必要になります。

 

 アレルギー表示についてはかなり複雑なルール変更になっています。原則として、個別に品名の後に()で記載することになり、原材料の場合は(〇〇を含む)と記載し、乳を含む場合は(乳成分を含む)としなければいけません。

 添加物では、(〇〇由来)という書き方になり、こちらでは、乳を含む場合は(乳由来)と記入するのです。さらに、着色料や調味料など用途名を記載しないといけない添加物の場合、「増粘材(加工でんぷん:〇〇由来)と、「:」や()がきでで区切ることが決められています。

 個別表示だとわかりにくい場合は、一括表示も行うことができます。今までは、原材料や添加物の代替え表記や拡大表記に記載されていないアレルギー物質のみを、「、原材料の一部に〇〇、△△を含む」と記載していましたが、新法では、原材料や添加物の後に、「(一部に〇〇・△△を含む)」と、すでに表示されているものも、全てを記載することなり、「一部に」や「・」も指定されました。

 代替え表記や拡大表記は大きく見直され、その物質の名称が使われていることが前提になりました。マヨネーズやオムライスは拡大表記から外され、さらに、卵黄や卵白は拡大表記とは認められず、卵黄(卵を含む)と表示することが求められています。

 

 他に、固有記号の使用が限定されます。現行では、販売者が製造委託先を固有記号で表し、製造者の詳細の記載をしていない場合が多いのですが、今後、製造者の表示が必要になります。

 消費者としては、観光地の特産品が県外の工場で製造されていて、がっかりすることがあるかもしれません。ですが、その特産品を作る技術を持つ製造者が近隣にない場合は、遠いところで製造する場合もあるのです。製品に責任を持つ販売者を表示しているのなら、製造場所を表示することが、消費者にとって必要な情報になるのか、私には疑問なのですがいかがでしょうか。

 

 そして、今回、最も大きく変更になるのが、栄養成分の表示義務です。

 義務の対象となるのは、加工食品(業務用を含む)で、生鮮食品については任意表示となります。本来、生き物である生鮮食品は、成熟度や収穫場所、旬などの季節変動によって、栄養成分が大きく異なります。また、個体差が大きく、栄養成分の許容誤差の±20%に収まらない可能性があるからでしょう。

 

 文科省が発行する、日本食品標準成分表では、各食品について、多くの個体を検査し、その標準的な値を掲載しています。しかしながら、個別の企業で適正な標準値を求めるために、多数の栄養価検査をすることは、とても困難です。

 このような場合、日本食品標準成分表のような「合理的な推定により得られた値」を使って計算し、「この表示は、目安です。」、「推定値」と表示する方法がとられています。

 栄養価計算というものはあくまで標準的な値です。しかも、個人の消化や吸収能力には差があり、調理の際の栄養価のロスなどもあることから、本当に目安として使用することが適切だと言えます。

 もう一つ、表示方法として、ナトリウムの量を食塩相当量に換算して記載しなければいけなくなりました。全く食塩を使用していない食品でも、ナトリウムは含まれていますので、食塩相当量を表示することになるのは少し奇妙なものです。

 

  ここまで、なんだか、批判的な物言いになってしまいました。せっかく始まる栄養成分表示です。活用して健康増進に役立てたいものです。しかし、そのためには、これらの数値についての知識も必要です。

 2015年に発表された日本人の栄養摂取基準では、成人の食塩相当量の目標値は、男性9g、女性7.5gです。昼食に購入したお弁当の食塩相当量が、1日摂取量の1/3以上なら、夕食は薄味にしたほうがいいかもしれません。

 成人の大体の1日の摂取量は、熱量1800kcalとすると、タンパク質は60g、脂質は50g、炭水化物は250gくらいを目安に、一食をその1/3として、栄養成分表示を参考にされてはいかがでしょうか。

 カロリーだけではなく、過剰摂取が成人病と繋がりやすい、タンパク質や脂質の摂取にも注意することができると考えると、この表示をする意味も出てくるのではないかと思います。