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排水経路の清掃で悪臭対策


 以前、勤めていた食品工場で、作業場内が下水臭い状況がずっと続いていました。

 聞くと、築30年以上であろう工場で、未だかつて排水経路の本格的な清掃は、したことがないというのです。

 外部から監査が入ることが多い、OEM主体の製造工場だったため、作業場内の不快な臭いは、製品の衛生状態を疑われることになりかねません。

 下水臭とはアンモニアやメタンといった刺激性の臭いです。当時、特に男子トイレの匂いが強烈で、洗い場からも強い匂いが漂っていました。

 

 業者を呼んで臭いの元を確認してもらったところ、下水管には尿石がかなり付着して流れが悪くなっており、雑排水の配管は、製造に多量に使用する固形脂が固まって、閉塞しているところもあるとのことでした。配管に詰まったものが腐敗し、悪臭の原因になっていたのです。

 何より、使われている排水管は、細い上に勾配も考えられていませんでした。さらに、その材質は耐熱性が低く、作業者が詰まった固形脂を溶かすために、大量の熱湯を流し続けたため、配管が変形して弛み、さらに汚れが溜まりやすくなっていたのです。

 

 業者に依頼して排水経路の清掃を行ったところ、業者も未だかつて見たことがないという量の尿石が排出されました。雑排管も高圧洗浄で綺麗に内部を洗い流すと、場内の異臭は一斉に感じないレベルになりました。

 それまで、清掃に反対していた古参の営繕担当者には、「会社の金の無駄遣い」と、ひつこく嫌味を言われましたが、結果良ければ全て良しです。

 その後、変形していた雑排管は耐熱性に優れたタイプに付け替え、勾配をつけ、詰まった時に清掃できるよう、清掃用のピットを所々に設けました。

 

 古い建物の排水経路には、問題になる要素が多くあります。コンクリートの排水溝は、食品成分の腐敗による硫化物の発生で、劣化してボロボロになります。排水管も経年劣化で破損する場合もあり、定期的な点検や適切な清掃が必要です。

  先日、神戸の飲食店が入ったビルで、地下埋没型の上水の貯水槽が、排水管の不良による汚水の流入で汚染され、ノロウイルスによる食中毒が発生したという事件がありました。

 地下埋没型の貯水槽は、清掃が十分にできなかったり、タンクの壁面に亀裂が発生したりして、水が汚染されるケースが多いことから、1976年以降は設置が禁止されていますが、それまでに建設されたビルでは設置されているところがあるそうです。下水の匂いがするような古いビルでは、注意する必要がありそうです。

 

 あなたの工場や店舗では、下水臭が強いと感じることはありませんか?衛生害虫の発生状況はいかがでしょうか?

 虫が多くなってきたと思ったら、トラップに付着している虫を虫眼鏡で観察してください。

 小さな蛾のような粉っぽい虫がチョウバエです。排水溝やグリストラップの、側壁や蓋の隙間に発生します。排水溝の泡洗浄が効果的ですが、コンクリートの劣化によるクラックが発生しているような排水溝では、劣化部分を改修することが必要です。

 

 また、背中が盛り上がった、足の長い虫はノミバエです。この虫は、排水管などの管壁に付着した、カスの腐敗物を好みます。下水臭とともに、この虫が増えるような場合は、業者に雑排管の確認をしてもらった方が良いでしょう。特に、粉や固形脂、獣脂などを多く使う施設の場合は、汚れの蓄積が早い傾向があります。

 

 排水経路に付着した食品成分は、材質の劣化を促進します。日々の清掃や、定期的な確認とメンテナンスが、排水経路の劣化を防止するために重要です。

 お客様の不快感と会社のイメージダウンにつながらないためにも、「くさい」ものへの感受性を高め、積極的に対応するようにしてください。