寒い冬の間は、食品を常温で放置していても、品質劣化の原因にはなりにくいものです。場所によっては、冷蔵庫より作業場の方が、室温が低い場合もあります。
でも2月を過ぎて「まだ寒いから大丈夫…」などとと考えていると、そんな油断をついて品質異常は発生します。
米飯デリカ工場で製品検査をしていた頃、毎年11月から2月は最も問題のない時期でした。製品検査には、表示している保管温度(当時は17℃でした)で、賞味期限まで保管したものを使用するのですが、それ以上の虐待検査を実施しても、ほとんど問題ありません。「清掃の効果が上がって、工場内の衛生レベルが向上した成果か…」と安心していると、3月に入り、いきなり検出菌数が増加するのです。
冬の間、寒さに耐えるため、昆虫や微生物は活動を休止しています。昆虫は卵や蛹という、エネルギーを消耗しない状態で越冬します。微生物は物質の表面にバイオフィルムを作り、その中で矮小化して越冬しています。存在していても、増えないため、問題にはなりにくい状態です。そして、春が来たことを感知すると、一斉に大型化し栄養細胞として活動を始めるのです。特に農作物は、申し合わせたように、全ての菌数が増加してきます。この状態は11月のある時期でいきなり冬モードに変わり、菌数は減少していきます。
昆虫については、種類によって増加する時期が異なりますが、こちらも同じような増減を辿ります。モニタリングでは5月頃から増加し、場内発生が増加するのは6月から8月で、11月には終息します。
このように、工場内の清掃年間計画を考える際は、季節ごとの対応を考える必要があります。特にお勧めしたいのが、2月末から3月の間に、集中的な掃除を実施することです。増殖が活発になる前に、作業場内の表面に付着したバイオフィルムを剥がし、越冬中の昆虫たちを除去することで、その後の工場内での問題を未然に防ぐためです。
集中清掃の内容は、普段清掃し辛い箇所の清掃と、作業場内の不要物の撤去です。
機器を移動して、機器の裏側や隙間に付着している、こびりついた汚れを除去し、配管上に溜まっている粉ぼこりを清掃し、天井の粉塵や、冷蔵庫のコンプレッサーや換気扇、通気口のフィルターに蓄積した汚れを除去します。
不要物の撤去で重要なのは、衛生害虫の出没しやすい、床や壁ぎわ、台下や棚などの、膝より低い位置に置かれている物、特に、ダンボールや発泡スチロールの箱などを撤去することです。これらは清掃不良の原因となり、衛生害虫の誘因になります。まだ温度や湿度が低く、堆積した粉ぼこりや放置されたダンボールが湿気を帯びる前に、撤去して清掃することが大切なのです。
2月末から3月にかけては、緑地管理の開始にも重要な時期です。草や木が芽吹く時期に、一年で最初の除草や選定を実施し、必要な場合は殺虫剤を使用することで、春先の昆虫の発生を防止しましょう。
この先の集中清掃は、その施設の状況によって異なりますが、4月か5月に実施し、その後は6月〜9月までは月1回、11月か12月に1回実施することが推奨されます。もちろん、日常の清掃は実施した上でのメンテナンス清掃です。
場内発生の衛生害虫が捕獲される場合は、殺虫剤だけで駆逐することはできません。衛生害虫のエサ場をなくし、隠れる場所を与えないことが、防虫防そには重要です。
微生物汚染を防ぎ、衛生害虫の発生を防止するため、まず、この時期の集中清掃から始めましょう。
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