お仕事で厨房や食品工場の監査をしていた頃、特に注意して確認していたことの一つが、調理器具の破損です。
調理器具といっても色々な種類がありますが、特に危険なのが、包丁の欠けや、金属ネットを使用した、ざるやフライ網などの金属製品の破片です。
特に、ザルのネットが枠から外れた部分の針金は、金属疲労で折れやすくなっており、食品に刺さって混入することがあります。細い針金は、金属探知機にも反応しづらいため、消費者が気付かず食べたり、電子レンジで加熱したりすると、事故につながる危険があります。
ところが、これらの器具はネットを挟み込んだ枠が破損しやすく、破損したまま使用し続けているところが数多く見られます。
器具が破損しやすい理由の一つは、無意識に行う器具の取り扱いにあります。
食品工場で勤めている時、シリコンヘラの3㎝もある破片が製品から出てきたことがありました。製造ラインで確認すると、破損したヘラが見つかり、その欠けた部分にクレーム異物がぴったり一致したのです。
欠けた部分はヘラの柄の付け根で、そこは、容器から食品をかき取った際、ヘラについた食品を落とすため、容器の縁にヘラをコンコンと叩きつける部分で、他のヘラにも同じ箇所に欠けや傷が見られました。
ザルの場合は、水や油を切るため、シンクのヘリや鍋ブチに打ち付けるため、変形して枠が外れるのです。新しいものを購入しても、すぐ壊れるからと、破損したまま使っている所が多くみられます。
破損したまま使っていると、いつか破片が消費者を傷つけるかもしれません。喉に刺さってしまうと、全身麻酔で取り出す手術が必要になります。
会社のルールとして、器具の使用方法を従業員に教育してください。器具は打ちつけたり、放り投げたり、荒く使わないことが重要です。
また、先の私の経験したシリコンヘラのクレームでは、多数保管されていた予備のヘラを使用することで、上司がヘラの欠けに気付かなかったということと、そもそも、器具の欠けに対する危害の認識がなく、上司に異常の報告をしていなかったという問題がありました。
その後、現場にある器具をすべて撤去し、必要なもののリストを作り、置き場を決め、ナンバリングして器具を配布しました。リストをもとにチェックリストを作り、作業前後に破損確認をし結果を記録するようにしたのです。
器具が破損した場合は上司と品管が確認し、異物混入につながる場合は出荷を停止して、原型が完全に復元できないときは、対象の食品は出荷しないルールを作り、作業者に異物混入の危険性を繰り返し教育しました。
一度クレームを起こしてしまうと、消費者や取引先の信頼を取り戻すまでには、相応の努力と時間がかかります。
この機会に、みなさんの職場でも、壊れた器具はないか、器具が破損した際のルールは適切か、確認してみてください。
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