夏場、ご飯を炊いたあと炊飯器のスイッチを切って、数時間ご飯を取り出すのを忘れていた場合、ご飯が糸を引くようなネトネト状態になった経験はないでしょうか。
これは、炊飯後のご飯に残った耐熱菌の仕業です。
耐熱菌は、一次原料の穀物や野菜、魚や肉に含まれていますが、生の食品中では、他の細菌の活動によって増殖が抑えられています。ところが、食品が加熱され、他の細菌が死滅して、耐熱菌の独断場になった瞬間、爆発的に増殖して食品を劣化させるのです。
加熱に強いといっても、耐熱菌の栄養細胞そのものが生き残るのではありません。菌の中に作られる芽胞が、通常の加熱では死滅しないという耐熱性を持っていて、加熱後の高温環境で発芽し、爆発的に増殖するのです。
耐熱菌にも食品の製造に関わるものや、食中毒の原因になるものなど、色々な種が存在しますが、総じて低温では増殖し辛いものが多く、加熱後の急冷やその後の低温保管(10℃以下)が、耐熱菌の増殖を防ぐポイントになります。
最近では、透明のビニール袋で密封されたお惣菜などの食品が、常温で販売されているのを見かけます。もし、その食品がpH4.6を上回り、水分活性0.94を上回っている、容器包装詰低酸性食品なら、ボツリヌス対策として120℃4分間(F値=4)の加熱を実施したものであるはずです。
耐熱菌が多い食品といえば、穀類や根菜が思いつきます。
納豆菌も耐熱性桿菌の一種ですが、蒸した大豆をわらで包んで発酵させたのが始まりと言われます。耐熱菌であるボツリヌスで食中毒を起こした製品も、レンコンや小豆、もち米など、土壌と関連した作物が原料として使われていました。
これは、これらの作物が育つ、土壌に耐熱菌が多いためです。土壌は夏場、太陽の熱で高温になりやすく、水分も失われるため、微生物にとっては生育に厳しい環境になります。その中で、乾燥や高熱を芽胞の状態で生き抜ける、耐熱菌が優勢になるのです。
耐熱菌の一族には、ボツリヌスの殺菌条件では死滅しない菌も多く存在します。pHが4.6を下回っていても、121℃で3分以上の加熱殺菌を要するフラットサワー菌と呼ばれるグループは、トマトジュースの品質劣化に関わっています。
これらの菌には、35℃を超えてはじめて活発に増殖するものも存在します。
F値=4の加熱が行われ、常温販売されている食品にも、表示には「直射日光をさけ、常温で保管してください。」と記入されていると思います。
「常温保管」で想定する温度は、25℃程度です。常温でいいからといって、35℃を超える夏の室温に放置するのは危険ですので、夏場は冷蔵庫で保管する方が無難です。
また、食品を加熱後65℃以上にホットキープすることで、耐熱菌の増殖を抑えることができます。炊飯ジャーで保温しているとネトらないのはこのためです。
しかし、温度が下がると増殖が始まりますので、温度管理には注意してください。
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