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そ族対策


 11月から12月にかけては、1年中でネズミの被害が最も多くなる季節です。

 急に寒くなると、ネズミたちも暖かいところを求めて、建物の中に入りたがります。特に屋内で食品や水が確保できる、食品工場や飲食店などは、ネズミに狙われやすい施設です。

 

 ネズミの害としては、食品の食害や、糞尿やダニなどによる施設の汚染、それらによる食品汚染から引き起こされる、食中毒や疾患の発生などがあり、ネズミがいる環境は衛生的に危害が大きいわけですが、実は、食品取り扱いの場でネズミに悩まされている施設が多いことに驚かされます。

 日本では、ほとんどありませんが、ヨーロッパや北米では、ネズミの介在を疑うようなサルモネラアウトブレイクが時々報告されています。

 

 私が以前勤めていた会社で、フランスからチョコレートを輸入した際、ピックアップして検査したチョコレートに、毛髪の混入が見つかりました。顕微鏡での確認で、ネズミの毛の特徴があり、そのチョコレートの微生物検査の結果、大腸菌が検出されるものが続出し、非常に驚いたことを思い出します。

 フランスでは、地下街が縦横に伸びていて、それが建物とつながっているため、ネズミの駆除が難しいと聞いたことがあります。ヨーロッパで時々サルモネラのアウトブレイクが発生しているのも、古い街並みが関係しているのかもしれません。

 

 私も長い食品品質管理のお仕事の中で、何度もネズミとの戦いを経験しました。

 ネズミを追い出す上で、最も大切なのは、出入り口を塞ぐことです。隙間という隙間を全て埋める。特に排水の出口、シャッターや天井の隙間は格好の侵入口です。食品施設にはクマネズミが圧倒的に多いのですが、彼らは垂直方向への上り下りを得意としますので、どんな高所であろうと安心できません。

 

 全ての隙間を塞いだうえで、それでもそれを食い破って侵入しようとする場合、内部で営巣している可能性があります。パッケージエアコンや、エレベーターの外周の断熱材部分、動かさないプラスチックパレットの穴で営巣された経験がありますが、親は恐ろしい勢いで子の所に帰ろうとします。何度も塞いだ箇所を食い破られるようなら、施設内の確認をする必要があります。

 

 それと、食べ物を与えないことも大切です。食品を出しっぱなしにしないこと。

 ビニール袋入りの食材は、簡単に食べられてしまいます。プラスチックのフタ付き容器に入れておくことで食害を防ぐことができます。

 もちろん、排水溝の食品残渣も残さないようにしなければいけません。粉類を使用する施設では、天井裏のエアコン周囲や通気口付近に粉だまりができて、それを舐めに来ることもあ流ので、定期的な清掃が必要です。

 ネズミの糞を顕微鏡で見ると、未消化なゴキブリの足が含まれています。ネズミはゴキブリを追いかけて捕食しますので、ゴキブリの駆除も必要です。

 

 ネズミは大変活動的で、製品のコンベアーラインが上下に蛇行していたり、スロープになっているところを走り回っていのです。そういう箇所の下に糞を見つけたり、配電盤の中のコードにかじられた跡が発見された場合は、防そ業者に相談しましょう。 

 殺鼠剤はクマネズミには効かないので注意してください。また、粘着シートもクマネズミやドブネズミでは、小さいものしか捕獲できません。粘着シートを設置した場合は、そのままにせず、頻繁に確認して、捕獲されたものが腐敗しないように注意が必要です。

 

 一度ネズミに侵入されると完全に追い出すのは大変です。

 もし今施設に、外部につながる隙間がある場合は、ネズミに入られる前に、適切な方法で塞いでおいてくださいね。