11月19日に宮崎県の中華料理店で、あんかけ焼きそばを原因とするセレウス食中毒が発生しました。
セレウス食中毒には、毒素型食中毒の嘔吐型と、感染型食中毒の下痢型があることが知られています。日本では発症例のほとんどが嘔吐型で、Bacillus cereusが増殖する際に生成する毒素セレウリドにより引き起こされます。
嘔吐型のセレウス食中毒は、飲食後30分から5時間で発症し、比較的軽い症状で推移することが多く、24時間以内に症状が終了します。しかしながら、セレウリドが肝細胞を障害すると、急性肝不全で死亡するケースもあるため、安心することはできません。
下痢型のセレウスも毒素を生成しますが、この毒素は熱や酸に弱く胃の酸で失活します。
下痢型食中毒は菌が腸内で増殖して生成する毒素により発症するため、潜伏時間は6から15時間と長く、症状は下痢のみのようです。嘔吐型では下痢や腹痛の症状がある場合が報告されています。
Bacillus cereusは通性嫌気性菌と分類されていますが、分析しているものからすると、好気性菌の方がしっくりきます。黄色ブドウ球菌の培地の表面に、卵黄反応がある白いべったりとしたコロニーができ、マンニット非分解性のため培地の色はピンク色になります。食中毒の原因となる食品も、焼き飯や焼きそば、スパゲッティーなどの穀類製品で、好気的な状態で繁殖する菌の特徴を示します。
この菌は、pHは中性領域、温度は中温付近を好みます。炊飯工場では、ボックスで流通する米飯にpH調整剤を添加しています。また、加工した米飯類の保存温度は大体10℃以下が普通なので、固化防止の為、トレハロースや糖アルコールなどが使用されています。
これは、この菌の繁殖を抑えるためです。米飯食品の流通には欠かせない危害防止対策ですので、添加物は怖いなどと思わず、むしろ消費者として製品を選ぶ際は、これらの添加物が入っていないものを恐れて頂きたいと思います。
先日、オムライスのお店で調理場を見ていると、ボウルに20食分ほどの炒めたご飯を入れておき、オーダーが来るとその一部をとって再度炒めて卵で巻くのですが、その際に炒めたご飯の残りを定期的にボウルに戻していました。
一度加熱調理した米飯や麺類は、耐熱性の高いセレウスなどの芽胞菌の独断場です。定期的に再加熱して栄養細胞を殺菌することは良いことですが、一部だけ加熱したのでは、かえって生育に適切な温度を保ってしまうことになります。
厚生労働省では、セレウス対策のため、加熱したご飯や麺は常温に6時間以上保管しないように指導しています。
ボウルのご飯はそれほど長く置くことはないでしょうが、定期的に加熱するなら保管している全量を再加熱する方が良いでしょう。
これから寒くなるこの時期。夏には少しの間でも冷蔵庫に入れるように注意していても、これくらいなら常温に放置していても大丈夫かな…と考えがちです。
でも、11月から12月前半は気温が急に上がる時もありますので、セレウス食中毒防止の為、油断しないようにお願いします。
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