次亜塩素酸ナトリウムの歴史を見ると、1851年にWatt Cという人により合成されたという記述があります。わが国では、水道の塩素消毒が始まったのが1921ですので、随分長い間、生活と密着して使用され続けてきた殺菌剤であると言えます。
現在、次亜塩素酸ナトリウムは、水酸化ナトリウム溶液に塩素ガスを吸収させて製造されています。物質的には不安定で、強アルカリ水溶液の形にすると安定するため、製品は工業用には12%、家庭用には6%程度の水溶液の形で販売されています。
次亜塩素酸ナトリウムには、強い匂いと腐食性があり、目や皮膚に付着した場合の危害について、「危険」の表示をしなければいけないと決められています。
次亜塩素酸ナトリウム溶液は、浅漬け野菜のO157対策や、ノロウイルスの嘔吐物処理の殺菌剤として、公的に使用が推奨されています。しかしながら、次亜塩素酸ナトリウム溶液はもともと不安定な物質で、希釈液はさらに酸化を受けて失活しやすくなるため、使う都度調合する必要があります。
薬剤メーカーのホームページに、「通常在庫(温度19~29℃)の場合、半年で12%から5%に低下しその後3.5%まで下がる」という実験結果がありました。次亜塩素酸ナトリウムを準備する場合は、1、2ヶ月で使い切れる量を購入し、冷暗所で保管するようにしましょう。また、使用する際は希釈液が必要な濃度になっているか、試験紙などで確認することも必要です。使用中に有機物の影響で濃度が下がるため、定期的に確認して適切な濃度を保ちましょう。
原液を小分けして保管する場合は、適切な強度のある遮光容器を使用することが必要です。食品容器を再利用したり、他の調味料や薬剤に使用されている容器を再利用すると、食品に誤使用する危険があり、実際に多くの事故が起こっています。容器は専用のものを使用し、表面には明確に物質名や用途を表示し、危険物であることを周知してください。
次亜塩素酸ナトリウムを多量に使用する場合、発生する塩素ガスが人体や環境に害する場合があります。部屋の換気には十分注意しましょう。
もし、原液や高濃度液が目や皮膚に付着したら、多量の水で15分以上洗い流し、必要な場合は速やかに医師の診断を受けましょう。また、誤って飲み込んだ場合は、口をすすぎ、コップ1から2杯の牛乳か水を飲ませて至急医師の診断を受けることが推奨されています。先ずは、そんな事態にならないよう、置き場や保管方法を確認してください。
ところで、次亜塩素酸は弱酸性から酸性側で殺菌力が強くなるため、次亜塩素酸水(強酸性次亜塩素酸水 pH2.7以下、弱酸性次亜塩素酸水 pH2.7~5.0、微酸性次亜塩素酸水 pH5.0~6.5)の生成機や液体が販売されています。確かに酸性溶液で多くなる次亜塩素酸(HCLO)は、細胞膜から浸透して強力に酸化するため強い殺菌力を持っています。食品衛生法でも野菜の殺菌や噴霧して環境の殺菌に使用が認められています。
一方、アルカリ性下では次亜塩素酸イオン(CLO-)の形で存在するため、細胞膜の透過性は落ちます。しかし、溶液中のOHーイオンが、多糖類やたんぱく質などの、細胞膜やバイオフィルムの基盤を損傷させることから、損傷部分からCLO-が侵入し、強力な洗浄力と殺菌力が発揮されます。つまり、洗浄殺菌力ではアルカリ性で使用する方が有効なのです。
黒くザラザラした汚れに次亜塩素酸水をかけても、表面張力で弾かれて何の効果もありませんが、泡ハイターなら瞬時に分解し、ツルツルになるというわけです。
どんどん新しい技術や製品が開発されています。今後はもっと安全で無害な殺菌剤が登場するかもしれません。しかし、新しいものに飛びつくのではなく、内容と使用目的を吟味して選択するようにしたいものです。
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