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酵母汚染に注意しよう


 酵母とは、カビと同じ真菌に属し、出芽または分裂によって増殖して,生涯を通じて単細胞で活動する仲間を指します。人の生活環境に広く存在し、多くは糖分を分解してアルコール発酵を行うので,古くから酒やパンの製造に用いられてきました。酵母はカビのように毒素を生成せず、タンパク質,ビタミン類に富み栄養価が高いことから、栄養食品や整腸剤としても使用されています。

 

 しかし、どこにでも存在する酵母は、食品流通の際に、品質劣化や包装の膨張を引き起こす厄介者です。特に糖を多く含む食品に被害例が多く、脱酸素剤やアルコール製剤で密封された環境下でも増殖し、水分活性やpHでも十分阻止できません。

 

 私も米飯デリカ工場でいた頃に、酵母による稲荷寿司のシンナー臭クレームを経験したことがあります。

 検出されたのはエチルアルコールから酢酸エチルを産生するハンゼヌラ酵母で、製造時や盛り付け時の消毒用に使用していた、アルコール製剤の使用をやめると、以後シンナー臭のクレームはなくなりました。

 

 また、おはぎの製造を始めた際も、春先から酵母の検出数が異常に増加し、問題になりました。表示した保管温度では賞味期限内に風味異常は出ないものの、家庭での取り扱いが悪いと、白い酵母粒が出現する恐れがあります。

 この時は成形機の部品を、80℃で20分程度間加熱殺菌して、使用まで冷蔵庫で保管するようにしたり、作業場の床や壁、機器類を次亜塩素酸ナトリウム配合の泡洗剤で洗浄するようにして改善に至りました。

 

 酵母は生野菜や果物の表面に多数付着していて、外部から搬入される梱包や台車などにも付着しています。それが、作業者の手や靴底に付着して作業場内にも持ち込まれ、直接食品に付着するか、床からの上昇気流に乗って浮遊し、落下菌として食品に付着して、条件が合えば旺盛に増殖します。

 

 酵母汚染を防ぐ対策としては、まず、作業場内の十分な清掃が重要です。私は今までの経験から、酵母やカビ対策の洗浄には、次亜塩素酸ナトリウム配合の泡洗浄剤が最も有効だと思います。洗剤の費用はかかりますが、泡洗浄で環境や器具を洗浄することは、場内のバイオフィルム対策としても有効です。

 外部からの汚染持ち込み防止に、衛生作業区ごとの靴底の殺菌や、台車の積み替えが有効です。外部から汚染を含んだ空気が清浄区に流れ込まないよう、外部との遮断や空気の流れも確認しましょう。

 

 加熱殺菌後の食品に再度酵母汚染が起こることで、クレームや品質事故につながります。食品の保管中は蓋や覆いで密封し、落下菌などによる二次汚染を防止しましょう。

 ヒトの口腔内のバイオフィルムにも酵母が存在することが知られています。食品を扱う際にはマスクを着用し、食品上部でお喋りやくしゃみをしないよう教育することも必要です。 

 

 酵母の増殖を防止するため、作業中は製品へのアルコール噴霧を控え、手袋やラインをアルコール消毒した時は、乾いたクロスで拭きあげるなどして、余分なアルコールが食品に付着しないように注意することも必要です。

 酵母やカビの胞子は一般的な環境に多く存在するため、どんなに衛生的に製造していても、完全に防ぐことは困難です。特に酸性で水分や糖分が豊富な食品では、加熱後付着した酵母が爆発的に増加する前に、速やかに品温を10℃以下に急冷し、冷蔵保管することが最も有効な対策です。

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コメント: 1
  • #1

    岩田しのぶ (日曜日, 20 9月 2020 10:06)

    酵母菌で成長作用があることがわかりこれからもずっと使い続けていきたいと思います。