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血液にまつわる汚染防止対策


 血液を介して伝染する病気には、B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒があります。

 それほど感染力が強いものではありませんが、これらのウイルスや病原菌を濃厚に含む血液に触れた場合、傷口や粘膜から感染する恐れがあります。

 これらの感染症は、日本国内でのキャリアーはそれほど多くありませんが、海外の特に不衛生なエリアでは保有率が高い地域があり、感染予防に対する注意が必要です。

 

 以前聞いた話ですが、スーパーの売り場で陳列していた商品に血液が付着していて、それを子供が触ったというクレームがありました。

 20世紀内であった当時、エイズ(HIV)に対する治療薬が今のように整っておらず、「死の病」と言われていました。血液などの体液で簡単に感染するものと、誤解していた方も大勢いた時代です。

 その後、このクレームを届け出た親から、商品に付着していた血液の生理学検査を要求され、高額な検査費用と、以後の保証の対応に大変だったという話でした。

 

 実際、B型肝炎ウイルスでは、血液が乾燥しても一週間は感染力を有すると言われます。肝炎ウイルスは日和見感染があるため、長期に経過を観察する必要があり、完全に安全を保障するためには、定期的な検査を継続する必要があります。

 

 病原菌が含まれていなければ、血液が付着していても良いというわけではありません。

 食品工場に勤務していたとき、包装して納品したバレンタインの商品の、数個の手提げ袋の端に血液が付着しているということで、取引先から全品返品されたことがありました。

 その製品は、箱詰めし、包装紙で包み、表示を貼って手提げ袋に入れるという包装作業を、新規の加工所に委託していました。その加工所では食品を扱う際は手袋を着用していましたが、包装紙を扱う作業は手袋をしていてはやり辛いと言う事で、素手で作業を行なっていたのです。

 

 実は取引前にこの加工所を確認に行った際、包装作業に手袋を着用するようお願いしていたのですが、作業者に徹底できていなかった為に起きた事故でした。作業主任の方は「手袋をすると作業性が落ちて時間がかかる」と言われましたが、結局クレームで急いで全てをやり直すことになりました。

 その後、作業者全員に手袋着用を義務付けた結果、慣れれば作業性に問題はなかったとのことです。少しの手間を省いた為に大きい損につながった一例です。

 

 その後のお仕事で、いろいろな製造業を見せていただきましたが、素手での作業が多いのは、包装作業などの密封した製品を扱う作業と、生の原材料を扱う作業です。

 ハムメーカーでは、原料肉の骨片確認のため、素手で肉塊を扱っているところが多ようです。しかしながら、豚肉は肝炎ウイルスなどの保有が多く、素手に発生した傷などから感染する恐れはないのかとても不安です。

 手荒れやサカムケなど、手には傷ができやすく、危険は高いはずなのに、大手ハムメーカーでも生の原料肉を扱う作業は素手で行われているところが多いことに驚きました。

 

 「自分は血液で感染する病気は持っていないから大丈夫」と思っても、あなたの血液が付着した製品を見たり触れたりしたお客様が納得するはずはありません。

 生肉のチェックも、素手で触っても「加熱するから大丈夫。」なのでははなく、作業者の手が感染の危険にさらされていることを忘れてはいけません。

 

 薄手の衛生手袋が開発されたおかげで、食品衛生が大幅に向上しました。これは医療分野でも同じです。

 ヒトが食べるものを扱う者として、感染防止に対する手袋の重要性を理解し、食品に触れる場合は遮断性が高い手袋を着用し、手袋の切断や破損に注意して作業しましょう。