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クレーム時の対応


 消費者からのクレームは、いつも突然やって来ます。

 もちろん製造者は良い製品を作るために日々頑張っているのですが、悪い偶然が重なって、消費者に迷惑をかけることになった場合、被害者のためにも会社のためにも、最善の対応を取る必要があります。

 先ずは被害の状況を把握し、素早く対応することが一番ですが、何故そうなったのか、原因を解明して対策を立てなければいけません。

 

 苦情処理で、その後の経過に最も重要な影響を与えるのが、受付時の対応です。

 クレームは製造側に責任があるものだけではありません。消費者の勘違いや、購入後の取り扱いの誤りによるものも多数寄せられます。しかし、クレーム発生時の対応者は、すべてのお申し出を受け付ける必要があります。

 この時、対応する人が、「弊社の製品でご不快をおかけし、申し訳ありません。」と声をかけ、先方の話を全て聞き取ることが大切です。「至急報告を上げ、調査させていただきます。今しばらくお時間を頂戴いたしますが、後日必ずご連絡させていただきますので了承ください。」とお伝えし、その場で判断したり謝罪することは慎みましょう。

 電話や売り場での対応時は、「お申し出内容を聞き誤ってはいけませんので、録音させていただいてもよろしいでしょうか」と、確認してから録音しましょう。

 

 内容はチェックリストに沿って確認しながら記入していきます。記入内容に間違いないように、お客様に読み上げて確認しましょう。

 チェックリストの項目に入れるべきことは、お申し出内容、お客様の症状と時系列の経過、ご希望の対応内容とその場で客様と約束した内容、お客様の名前と連絡先、製品名、購入日時、購入場所、賞味期限とロット、現物の有無、引き取り方法などです。社内対応項目として、受付日時、対応者、受付状況(電話・メール・売り場)、報告日時と報告先などです。証拠としても記録は重要ですので、作成した書類は確実に保管しましょう。

 食中毒に関するクレームは、これから先、拡散しそうな場合は保健所への届け出が必要です。

 

 クレームを受け付けたら、先ずは現物を回収して保管しましょう。内容物がなくても、容器や包装だけでも回収し確認方法を検討してください。

 飲食店の場合、毛髪混入や肉の加熱不足は多いクレームです。現物をすぐに捨ててしまっているところが多いと思いますが、後で証拠としてそれが必要になる場合があります。また、クレーム品を従業員全員で確認することで、再発防止対策を考えることが出来、次のクレームを防止に役立ちますので、完全に処理が終了するまでは保管しておくことが大切です。

 

 クレーム品を保管するときは、検査する際のことを考え、衛生的な袋に厳封し、他の食品とは明らかに区分して、状況に応じて冷凍や冷蔵で保管しましょう。

 以前ある飲食店で、お客様から「水がハイター臭い」というクレームがあり、受付けたアルバイトがお客様に謝った後その水を捨ててしまいました。後からお客様が体調を崩されたのですが、現物がないため、水にどんな塩素剤がどのくらい含まれていたのか分からず、原因の特定ができませんでした。

 

 お客様が原因の説明を求められている場合、現物の検査は消費者の疑念防止のため、なるべく第三者検査機関を使用することが推奨されます。しかし、検査すると全ての原因が判明するわけではありません。製造記録や保管品の確認などで、できる検証を速やかに行い、原因を追求しましょう。

 

 私が工場の品質管理をしていた頃、口の中から出てきたという異物は、消費者由来のものが多かった印象があります。

 例えば、おにぎりからガラスが出てきたというクレームを調べてみたら飴のかけらだったとか、チョコからチョコより大きい歯の仮補修剤が出てきたとか、サンマの骨、きくらげ、キャベツの葉などがカップに入ったゼリーやプリンから出てきたというお申し出です。

 しかしながら、全てをお客様と判断することは危険です。たとえお客様の勘違いがあったとしても、自社で起こる可能性を追求し、改善対策を実施しましょう。

 

 クレーム対応により、お客様が「二度と買わない」と思われるか、「信頼できる」と思われるか、評価が分かれてしまいます。今の時代、ネットで噂が拡散すると、会社イメージが大きく左右することになります。

 特に悪い噂は拡散しやすいので注意が必要です。