食品の自主回収情報では、異物混入によるものが毎月5〜10件発生しており、異物の内容別集計では金属とプラスチックが、大体同率で1位になっています。
過去5年間に発表された自主回収の原因になった金属を見ると、原因が判明している中で最も多かったのが「針金」で、次が、「スライサー・包丁の刃」、「機器の破片」、「包材片」、「ワッシャ・ネジ」で、クリップや、金属ブラシ・金属たわしの毛というのもありました。
「針金」は菓子や惣菜などで混入が発生しています。ストレーナーやザル、網じゃくしのネットなどの細い金属線は、長期の使用で金属疲労により折れて食品に混入しやすくなります。
ネットコンベアや焼き網のような太目の金属線も、経年劣化で折れて混入する場合があります。折れ曲がったり、錆が発生したものは折れやすくなるため注意が必要です。
また、工場の補修箇所や、ラインの固定に針金を使用している場合、捻じ曲げたりしている箇所が折れやすくなるため、細い針金の使用は危険です。事例の中にもありましたが、包材の口を縛るビニタイは、中の金属が折れて落下することがあります。製品に使用する場合は場所を限定して管理しましょう。
針金のような細長い金属は金属探知機で反応しにくいため、流出を防止するためには、使用時の確認で破損を管理することが重要です。
「スライサーや包丁の刃」の場合も、細く小さいものは金属探知機を通過しやすい為、流出して人が食べた場合には危険です。これも使用前後に目視確認し、破損が発生した場合は、原型を復元できるまで探索することが対策になります。
時々、破損したままの包丁を使用している企業がありますが、一度破損した箇所は次の破損が起きやすく、原型の確認が難しいことから、破損したものは使用しないようにしましょう。
「機器片」については混入原因により金属片の形状が異なります。
金属同士の摩擦により削り取られて発生する破片は細かく微細なものになり、脱落や剥離が原因の場合は比較的大きいものになります。しかし、どんなに大きくても、材質によっては金属探知機で反応しないものもありますので注意が必要です。
機器の破損は、使用前後の確認や、使用中の異音や振動の検知で防止することができます。何かいつもと違う状態になったときは、必ず上長に報告するよう教育を徹底しましょう。
破損が発生した場合、機器の修繕には時間や費用がかかります。しかし、破損したまま使用し続けることには問題があります。不完全な機器は新たな破損につながり易く、新たに破損した場合その発生に気付きにくくなるからです。応急措置を確実に行い、いつも新たな異常が確認できるようにしておくことが必要です。
金属異物の流出防止に、多くの食品工場では金属探知機が使用されています。
金属探知機は設定を誤ると検出感度が変化するため、テストピースで使用前後と適切なタイミングで感知確認し、記録を残しましょう。この場合、製品の上にテストピースをおいて反応器の開口部中央あたりを通過させることが推奨されています。
反応品の取り扱いについても注意が必要です。反応したものは全数廃棄というルールにしているところがありますが、金属探知機は品温や振動、電磁ノイズによって誤作動することがあり、無駄に食品ロスを増やす恐れがあるからです。
また、金属反応があった場合、直ちに混入金属片を確認して原因を特定することが、その後の危害拡大を防止するために重要です。たまたま大きい破片だけに反応し、小さい破片はスルーしている恐れがあります。反応品をそのまま廃棄しては見落としてしまう恐れがあります。
小さいサイズの金属片は人体に影響なく、危害に当たらないという考え方もあります。
缶詰を開けるとき、どんな方法を取っても缶の切り粉が発生するのですが、缶詰協会ではこれは人体への危害はないと説明しています。
金属異物の最小サイズを決めている国もありますが、だからと言って入っていてもいいものではないと思います。もちろん、微細な金属片は人体への危害もないと思われますが、表示にないものが食品に含まれていることについて、品質に責任を持つ製造者として問題があると思うからです。
異物混入を防ぐためには、作業ルールや注意事項を守ることが重要です。
下記の項目について再度確認してはいかがでしょうか。
- 機器は丁寧に扱い、作業中ぶつけたり、傷つけたりしていませんか
- 作業中、いつもと違う音や振動があった場合は上長に報告していますか
- 作業前後に、ラインや機器に破損やネジの抜け落ちは無いか確認していますか
- 金属探知機のテストピース確認は、作業前後と停止後再開前に実施していますか
- 金属探知機で反応品が出た場合は、誤作動の確認や異物の検査をしていますか
- 製品は定期的に目視確認を実施していますか
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