食品工場の品質管理がまず最初に取り組むのは、毛髪混入防止対策といっても過言ではありません。
食品の毛髪クレームは、自主回収には繋がらないものの、数では最も多いクレームだと思います。
私が2箇所目に勤めた米飯デリカの工場では、多いときは月に数度、毛髪混入クレームの届け出があり、親会社のスーパーの品管からいつも注意されていました。
就任後、最初に実施した対策がローラーチェックです。作業室への入室前と、作業中の午前と午後に一回ずつ、ローラーを持ったパートさんに、作業者に毛髪が付着していないかを確認してもらいました。
ある時、作業者の白い作業服にローラーをかけると、黒い毛が沢山ローラーについてきてとても驚いたことがあります。その人は作業服の下に黒いモヘアのセーターを着ていたのですが、よくみると作業服の布目の間から、モヘアの毛先が沢山突き出していました。
実は、繊維には帯電しやすい電極が決まっていて、マイナスに帯電しやすいものとプラスに帯電しやすいものが摩擦すると、静電気が発生しやすくなるのです。作業服の材質は綿とポリエステルの混紡で、ポリエステルとウールなどの獣毛は非常に静電気が発生しやすい関係にありました。
このことから、衛生ルールとして作業服の下にはウールやモヘア、ナイロンなどは着ないことと、作業服を着る前に、私服にローラーをかけて、私服についた毛髪や繊維を取り除くというルールを決めて、全員に教育しました。
この対策で、毛髪クレームはある程度減少しましたが、それでも根絶はできませんでした。
その後、よく観察してみると、作業リーダーの数名が被っている帽子が他の作業者とは違う仕様で、首回りに荒いネットが使用されていました。
そして、これを改め、作業者と同じ帽子にしたところ、毛髪混入のクレームは激減し、1年に1回あるか無しかのクレームになりました。
その後、ローラーチェックで付着する繊維や毛髪を、顕微鏡で確認し続けました。その結果、多くの獣毛や、鳥の羽毛が発見されたのです。獣毛は、犬や猫だけでなく、タヌキや羊毛、着色されたネズミの特徴があるものも見られました。わずかに付着した小さい繊維でも、お客様が見つけるとクレームになってしまいます。作業者にはこのことを出勤時朝礼などで説明し、とにかく念入りにローラー掛けをしてもらうように教育を続けました。
また、毛髪が帽子との摩擦による静電気で落下しやすくなることが考えられます。防止と毛髪の間に、もう一枚インナーキャップを被ることで、静電気による毛髪の飛び出しを防ぎましょう。
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