8月のNHKニュースで、神奈川県の海岸にシロナガスクジラの赤ちゃんの死体が打ち上げられ、その胃から3センチ角のプラスチック片が見つかったという報道がありました。
まだ母乳しか飲んでいない赤ちゃんクジラ。その胃からプラスチック片が発見されたことは、海中に浮遊していた物を飲み込んだと考えられ、それほど海の汚染が進んでいる深刻な事態と専門家は指摘しています。
プラスチックは、今や食品衛生にとって欠かすことができない素材です。軽く、柔らかく、耐久性があり、遮断性に優れています。また、フィルムの重合によりガス透過性の調節も可能で、脱酸素剤の使用やレトルト殺菌が可能になることで、本来の可食限界をはるかに超えた期間の流通が可能になっています。
今の食品の流通において、プラスチックを他の材質に変更することは考えられない状態と言えます。だからといって、今回のクジラの赤ちゃんが証明するように、現状の海洋汚染を放置することもできないことです。
プラスチック類が不燃ゴミとして分別収集される原因になった、プラスチック燃焼時に発生するダイオキシンの大気汚染は、1990年代に大きい社会問題となりました。その頃私は、消費生活アドバイザーとしてゴミ処理問題について学ぶグループワークに参加していました。
当時、既にゴミの埋め立て場は臨界状態で、さらに埋立地の逼迫につながるプラスチックごみの不燃化には疑問の声もありました。
一方、ゴミ焼却の現場では、水分を多く含む一般ごみの燃焼には多くの重油が必要で、プラスチックごみが混ざることでよく燃えるため、重油を削減できると言われていました。
その頃は小規模なゴミ処理施設が多く、燃焼炉の能力不足やダイオキシン処理を実施していないところもあり、プラスチックの燃焼処理には問題がありました。しかしながら、今や法整備と共に焼却施設の能力は上がっており、ダイオキシンの発生はほとんど問題ないレベルです。
燃焼で発生した熱による発電でエネルギー回収もできるため、今やプラスチックゴミは可燃ゴミとして扱う自治体が増加しています。
今後燃焼処理を推進するためには、温室効果ガス対策への技術革新は必要ですが、廃プラスチックの多くを発展途上国に輸出するような、現在の処理方法にはあきらかに問題があり、これが海洋汚染につながっています。
ゴミ問題を勉強していた当時、「遠い未来に、太古の地層から廃プラスチックが出てきたら未来人はどう思うだろう、今の石油や石炭のように素晴らしいエネルギーの地層として採掘するかもしれない。」と話していた先生がいました。限りある資源を使って、全てをエネルギーとして使用してしまうというのは、どの文明を見ても滅びのシナリオです。
ひとまず、現状の対策としては、海洋汚染の原因になるゴミの自然環境への流出を減らすこと。そして、再利用すべきプラスチックを限定し、洗浄に手間のかかるプラスチックゴミは可燃物として処理し、エネルギーとして回収するなど、新しいシステムを構築すること。将来的に廃プラスチックに関する処理方法の技術開発を支援することなどが求められるのではないでしょうか。
使用する側には、不要なプラスチックの使用を控えること、必要なプラスチック製品も、使用方法や管理方法を見直し、使用量の削減に努めることが必要です。特に包装材や衛生備品をプラスチックに頼る食品企業には、率先して対応しなければいけない責任があると思います。
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