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アメリカのマクドナルドが販売したサラダで寄生虫食中毒


 食中毒は5/20〜7/21にかけて発生し、ニューヨークなど16州で患者が確認されました。

 調査の結果、マクドナルドが販売したサラダのロメインレタスとニンジンから寄生虫サイクロスポーラが見つかったとのことです。

 

 サイクロスポーラは熱帯から亜熱帯に生息する寄生虫で、ヒトを含む霊長類の腸管上皮細胞に寄生します。

 主な症状は頑固な下痢で、腹部不快感、軽度の発熱などを伴いますが、死亡例は見られないとのことです。

 診断は糞便中にオーシストという形態を排出することでわかりますが、このオーシストでは感染せず、湿潤な環境で成熟し、寄生虫になることで感染を引き起こします。

 

 感染原因は、寄生虫に汚染された生鮮食品や飲料水を経口摂取することで、アメリカでは以前から、中米から輸入したキイチゴなどで食中毒アウトブレイクが発生しています。

 感染防止のため、アメリカではHACCPを義務化して、対象となる農場への用水処理などを指導していますが、寄生虫対象の用水処理は困難であることから、毎年発生事例が起こっている状態です。

 

 

 HACCP前提条件に原材料の安全性が挙げられています。

  • 食品の安全性にとって脅威となる環境区域の使用は避ける。
  • 食品の安全性にとって脅威とならない方法で、汚染物質、有害小動物、動物および植物の疾病を管理する。
  • 食品が適切に衛生的な条件下で生産されることを保証するための規範および手順を提案する。

 コーデックス委員会の「食品衛生の一般原則の規範」ではこのような対策の必要性が示されています。しかしながら、今回の寄生虫食中毒では、広範囲に偶発的に環境が汚染された可能性があり、危険な地域と言えども農業生産地帯の作物です。全て使用禁止にすることなどできません。

 また、寄生虫の検査では、濃縮や顕微鏡での確認など専門的な知識が必要です。農場や食品工場で、簡単には実施できないため、安全を確認して使用するにも限度があります。

 それに、農場で使用する上水だけでなく、作物を育てるために使用する農業用水への汚染が、農産物への汚染につながることが指摘されていて、農場で使用する全ての水を処理することは不可能な話です。

 

 

 日本でのサイクロスポーラ検出は、東南アジアや南米などへの旅行者に保菌者が見つかる事があるものの、まだ環境への汚染は報告されていません。

 少なくとも、日本での同寄生虫症防止のための対策としては、対象となる地域から輸入する野菜や果物は、70℃以上に加熱して使用し、生食用には国産産を使用することが推奨されます。

 

 また、対象の地域に旅行した際は、生水や生の食品を食べないようにして、よく加熱調理されたものを食べることが無難です。この寄生虫については、南米の国では人の保菌率が一割を超えると言われています。ワクチンはありませんので、旅行中、旅行後の体調管理には注意が必要です。

 

 帰国後、特に食品関連企業に勤める方は、万一保菌している場合を考え、トイレの後や調理の前には手をよく洗うなど、基本的な食品への汚染防止ルールを遵守しましょう。