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感染防止の要は手の衛生管理


 今回、愛媛県で発生したサルモネラ食中毒。194人が感染し、136人が医療機関を受診して23人が入院するという大規模な被害になりました。

 事故を起こした企業が加入している、県漁連が行った謝罪会見で、原因として「生の鰻さわった手で蒲焼を触るなど…」何らかの不衛生な行為があった可能性をあげています。

 

 土用の丑の日、鰻を求める消費者で売り場はごった返していたことでしょう。その中で冷静に衛生ルールを守ることは容易なことではありません。

 食品衛生の知識がない臨時アルバイトが厨房に入っていたかもしれませんし、忙しい中、彼らに細かく目を配ることもできなかったかもしれません。

 いつもは鰻をさばくだけの人が、忙しさから、手の空いた時に蒲焼を扱ったとしても不思議なことではありません。

 

 しかしながら多分この店舗では、繁忙期である丑の日には毎年同じように対応していて、例年は大きい問題がなかったのでしょう。なのに、今年はこんなに大きな事故が発生してしまいました。原因はたまたまサルモネラ菌が厨房内に持ち込まれたことですが、経路として次のことが考えられます。

  • うなぎの腸管に保菌されていたサルモネラ菌が、さばいた人の手を介して製品や環境を汚染した
  • 従業員の中にサルモネラ菌の健康保菌者がいて、その人の手を介して糞口汚染が発生した
  • 製品を入れるトレイや器具が、洗浄時に使用したブラシやスポンジ由来のサルモネラ菌で汚染を受けた
  • 外部から搬入された原材料や備品にサルモネラ菌が付着していて、それを触った手由来で汚染が広まった

 大体の場合、焼き上げ作業者は、生の鰻と焼き上げた蒲焼きの両方を扱います。この時、鰻に食中毒菌が付着していたとしたら、焼き上げ後の蒲焼きを汚染する危害を、完全に否定することはできません。

 この危害に対しては、加熱後すぐに10℃まで冷却して汚染菌の増殖を阻止するか、フィルムで真空包装して付着した食中毒菌が死滅する程度の袋殺菌を行うかが必要になります。

 

 しかしながら、たとえ10℃以下まで蒲焼きが冷やされたとしても、まだ蒲焼きにサルモネラ菌は残っている恐れがあります。それをそのまま弁当に加工して常温で販売したり、暖かいご飯にのせて長時間置かれた場合、その間に発病するほどの菌数になることが考えられます。

 ひるがえって言うと、特に夏季の土用の丑の日に蒲焼き製品を販売するのは、非常に危険性が高いことだとわかります。安全に販売するためには、十分な準備と汚染を防止する厳密なルールが必要になります。

 

 食中毒事故のほとんどは、いつもは大丈夫だけど、たまたま悪い条件が重なり発生します。守るべきルールを確認して事故のないように注意しましょう。

  • 焼き上げ時には、決められた加熱時間や加熱温度を守りましょう。
  • 炭火を使用する場合、加熱にムラが発生しますので焼き上がり温度を確認することが必要です。
  • 焼き上げ作業者が、焼き上げた後の製品を扱うときは、生を扱った器具や手袋で触れない対策を立てましょう。
  • そのまま食べる食品や、それに使う容器を扱うときは、新しい手袋をつけて表面をアルコール消毒しましょう。
  • 焼き上げた製品に使用する器具は専用の衛生的な物を使用し、使用前にアルコールと新しいクロスで拭きあげましょう。
  • 生を扱う作業者が蒲焼きを扱うときは、エプロンを交換し、手洗い、新しい手袋の着用、アルコール消毒を義務付けましょう。

 私事ですが、先月末からアデノウイルスに感染して2週間も寝込んでしまいました。

 日頃から、ウイルスに感染しないように、手で目や鼻を触らないように注意していました。気づかない間に手に付着したウイルスが、その標的部位である喉の付近の、目や鼻の粘膜に手指で多量に付着させるてしまうからです。

 なのに、その日は目がゴロゴロしていたこともあり、頻繁に目を触ってしまいました。最近あまり風邪を引いていなかったので、「このくらいは大丈夫だろう」と、少し油断していたのかもしれません。

 油断した時に事故は起きます。痛い目にあってそのことを実感するのでは遅いですよね。