海外の工場で実施する自主検査結果について、困っている話を聞きました。
解凍後無加熱摂取の冷凍オクラが、通関の検査では異常がなかったのに、報告ミスで後から来た工場の自主検査結果で、大腸菌群が陽性だったと言うのです。
別検体で再検査するにしても、輸入前に製品の品質を確認するための検査結果が確認されていないことと、前の検査結果は実験ミスで片付けていいのかについて悩んでいると言うのです。
そもそも、現地には検査の専門機関などがなく、検査を外部に依頼することはできません。
工場の検査員は微生物検査の経験がなく、微生物に関する基礎知識もない人だそうです。
検査方法については、工場立ち上げ時に、培地メーカーの営業が英語で説明したのを、英語の分かる現地スタッフが検査員に通訳して伝えたそうですが、既にその時の検査員は退職していて、今は後任者が前任者からの申し送りで検査を実施しています。もちろん、現地語のマニュアルや、相談できる指導者もいない環境です。
輸出するかどうかを判断する為に検査室を作ったにしては、内容は甚だ不安といえるでしょう。だから検査結果が意味のない状態になっているのだと思います。
大腸菌群は、乳糖を分解してガスと酸を生成する、グラム陰性、芽胞非形成の好気性若しくは通性嫌気性桿菌です。日本の公定法では手順も多く大変なので、国際的に信頼性を認められているペトリフィルムを採用しているそうですが、ペトリフィルムの大腸菌群判定は、熟練者でもガスの生成状況の判断に迷うことがあります。
私もペトリフィルムを使用していた時、わかりにくいコロニーは実体顕微鏡でガスの状態を確認するようにしていました。それでもガスの発生が確認できない赤黒いコロニーを、何度かスリーエムに確認してもらったことがありますが、大体の場合大腸菌群と判定され、小さい気泡が発生していると言うのです。
どんなに注意していても検査時に気泡が入ることがあるため、菌が出す気泡との区別がかなり難しいのです。
現地の検査担当者も、判定に困っているのかもしれません。
大腸菌群はシンクの隅や洗浄スポンジなど、湿った汚れには必ずいる一般的な細菌です。
食品衛生法や衛生規範で大腸菌群陰性を基準にしている食品には、そのまま食べる冷凍食品や乳製品、氷菓、洋生菓子、魚肉練り製品、食肉製品、ゆで麺などがあります。
夏になると、保健所の検査が強化されるので、アイスクリームなどは大腸菌群が検出されて自主回収するケースが多くなります。
大腸菌群は機械のモーター部分や回転バネの軸の奥など、食材が漏れ出て洗浄できない箇所に増殖します。
私も以前の経験で、分注機のシリンダーの端にどうしても洗えない圧力弁があり、定期的に交換しないと製品から大腸菌群が検出されると言うケースがありました。
大腸菌群を完全に抑えるには、HACCPを元にした製造工程の見直しが重要です。
最初に紹介した冷凍野菜は、加熱後、包丁とまな板で作業者が適切な大きさにカットする工程があり、それを手計量して包装するとのことでした。
加熱後の工程が複雑になる程、汚染の機会が増えます。
安心して輸入する為には、包装後に大腸菌群対象の加熱殺菌をするか、カットしてから加熱して、そのまま袋に入れるか、加熱後の汚染を防ぐ方法を考えるべきだと思います。
何れにしても今の作り方ではいつ汚染を受けるかわからず、不安な検査に振り回されることになりかねませんね。
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