先週の自主回収情報で、高速道のサービスエリアで販売した、ご当地ラーメンに脱酸素剤が入っていない製品が混入している可能性があり、賞味期限内にカビや変色が発生する恐れがある為回収するという事例がありました。
生麺など水分活性が高く糖分が豊富な製品は、そのままであれば数日でカビや微生物が繁殖し、品質が劣化してしまいます。
脱酸素剤などの品質保持剤は、カビや好気性菌の繁殖や、油脂やビタミンの酸化、ダニや害虫の生育等を防ぎ、賞味期限を延長することを可能にしてくれます。それに伴い、販売ルートの拡大などが期待でき、品質保持剤にかかる費用以上のメリットが期待できるのです。
食品の包装に品質保持材を使用する場合は、封入する製品の特性や包装内の容量により、メーカーに相談して薬剤のタイプや容量、包材の材質などを選択します。
脱酸素剤には鉄粉を使用した物と、有機系の反応を利用したものがあります。
鉄粉のタイプは、金属探知機に反応することを利用して、反応しないものを除去することで、脱酸素剤のが入っていない製品の流出を防ぐことが出来ます。有機系のタイプでは、金属探知機を使って包装後製品の金属異物を確認することが出来ますし、そのまま電子レンジを使用することも可能です。
脱酸素剤に、包装内の酸素濃度が0.1%以下になると、ブルーからピンクに変色する試験紙が付いたタイプもあり、包装内の脱酸素状態を確認して出荷できるメリットがあります。
空気中に20%ほど含まれる酸素を脱酸素剤で吸着してしまうと、その分内部の容量が減ってひしゃげてしまいます。カサのある柔らかい製品を包装する際は、自動包装機に窒素や二酸化炭素などの不活性ガスのボンベをつなげ、シール前に包装内の空気を置換する必要がありますが、最新の有機系の脱酸素剤では、酸素を吸着した分だけ二酸化炭素ガスが発生するものも開発されています。
窒素や二酸化炭素は不活性ガスと呼ばれ、これらはカビの発育や食品の酸化に関与しないため、品質保持剤の代わりに包装内に充填して使用されています。窒素だけではカビなどの抑制効果が低いため、酸化防止剤と併用されますが、カビに殺菌力を有する二酸化炭素との混合ガスが使用っされる場合もあります。この場合も、二酸化炭素は包材を通り抜けやすく、食品成分や水分と結合しやすい性質がある為、脱酸素剤ほど長期に渡る保持効果は期待できません。ちなみに、鉄系脱酸素剤と二酸化炭素は同時に封入すると酸素吸着反応を妨げる事が知られていますので、二酸化炭素ガスや混合ガスを鉄系脱酸素剤に使用しないように注意が必要です。
この他の品質保持材として、アルコール蒸散剤も焼菓子や餅などでよく使われます。アルコールの殺菌力でカビの発育を抑え、アルコールの保湿効果で、中の食品をしっとり保つというものです。鉄剤タイプの脱酸素剤とアルコール蒸散剤を組み合わせたものも発売されていますが、脱酸素剤やアルコール蒸散剤には特有の臭いがあるため、食品に使用する際は保存テストで、官能に異常がないことを確認することをお勧めします。
また、アルコールを資化して酸化エチルを産生する酵母がいると、セメダイン臭などの異臭クレームに繋がりますので、特に糖分の多い製品には使用をお勧めできません。
これからの季節は、気温が上がることで冬にはあまり増殖しなかった、通性嫌気性の耐熱菌や酵母が活発になってきます。
品質保持剤が入っているからと安心せず、長期に保管する場合は、食品をできるだけ冷蔵庫などの低温で保管するようお勧めします。
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