私は、趣味で食品の自主回収情報を集計しています。
以前、食品工場で品質管理担当だったとき、自社でも発生する可能性がある回収事例について、週間で行なっていた出社時教育の際に、防止対策や注意事項のお話しをしていました。
人のふり見て我がふり直せ…前車のくつがえるは後車のいましめ…同じ地雷を踏まないように対策をたてることができる。回収情報はとても貴重な情報なのです。
その後、品質管理会社で工場点検のお仕事をするようになり、日々発生する回収情報を客先と共有することは話題として重要で、点検の際の確認項目としても使用していました。
このように有用な情報です。そのままにするのではなく、データ化して色々な角度から解析してみると、今後、会社が回収という災難にあわないために、どうすることが必要なのかが見えてきます。
例えば、回収理由別に時系列にグラフ化してみると、その時期に特徴的に発生する危害要因が見えてきます。年間では、回収数は11月、12月が多く、微生物基準違反は6月、7月に多い傾向があります。これは保健所の査察がこの時期に強化されるためです。なので、年末に販売する商品では、特に表示内容や期限管理、アレルギー物質の漏れの確認が必要です。また、微生物基準のある食品を製造する際は、基準を逸脱しないよう、衛生的な製造方法を確立しなければいけません。特に夏場のアイスクリーム・氷菓の大腸菌群対策にはご注意ください。
業種別にみた回収件数は、毎年「菓子・パン」が断トツの第一位です。
理由としては、菓子製造業は他の業態に比べ、中小・零細企業の割合が高いことがあげられます。また、製造品目が多く、品目ごとのバリエーションが多様になる傾向があり、多種の包材やラベルを使用するため、取り間違える危険が高くなります。
品質保持材を使用して賞味期限をより長く延長するケースが多いことも原因の一つであると考えられます。長い賞味期限は、期限日印字の際、勘違いによる誤表示につながりますし、賞味期限までの間に、ちょっとした包装不良やピンホールが、カビや品質不良の原因になります。
私も、スーパーの寿司や弁当を製造している工場から、菓子製造業に転職した際、比較にならないような危害の多さに驚いた経験があります。
寿司や弁当のように、今日が無事過ぎればOKではなく、消費者の手に渡ってから数ヶ月先までの品質を保証しなくてはいけないのです。それも、新製品を好む業界で、十分な検証もできないままに新製品が動き出します。
実際、新製品の発売前、事前に十分な検証を実施するなどと言うことは、所詮無理な話です。一度、現場ロットでテスト製造したくらいでは、すべての危害を把握することなどできません。連続製造を始めて、繁忙期を超えなくては、真に安心できないのです。
そんな時、他社の回収事例は転ばぬ先の杖としてとても参考になります。なにせ、先に失敗してくれているのですから、同じ地雷を踏まないようにできるチャンスです。
HACCPの危害分析の際にも、同業者の回収情報を確認されておくことをおすすめします。
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