大阪府 食の安全安心認証制度


 大阪は「食いだおれ」の町として知られることから、飲食店向けの認証があり、小店舗にも取り組みやすい、HACCPを基にした「大阪府版食の安全安心認証制度」を実施しています。

  認定は、登録の認定機関が行い、すでに190社以上の認定を出しています。

 認証を取得するには、大阪府食の安全安心認証基準を80%以上実施し、提出書類を作り、認定機関を決めて提出する流れです。

 ここでは、認定基準について、今までにウェブ塾で紹介したフォームや文書を使い、どのように実施し、証明していくかについて提案していきます。

 

 認証制度について詳しくは、大阪府食の安全安心認証制度ホームページでご確認ください。

 評価項目のグレーになっている部分は必須項目です。全項目の8割を実施できていることが認証の基準になりますので、できるだけ全項目について、実施を証明できる形で整えていきましょう。

 青く着色している項目は、各社で決めて記入していただく項目です。一つ一つリストに書き込んでいきましょう。

 私が提案するチェック表フォームのPDFを、ダウンロードできるようにしていますので、参考にしていただければ幸いです。

 

 それでは、一項目ずつ見ていきましょう。

  1.  手洗い設備には、無香料の薬用液体石鹸を使用しましょう。ここにはメーカーと品名を記入すればいいと思います。手洗いの蛇口はセンサーによる自動水栓の設置がおすすめです。今が手回し式の場合は、手洗い後の手を汚染する恐れがあります。レバー式にするだけでも手を使わなくても操作できて衛生的です。監査時の評価に影響がありますので、できればこの際に、自動水洗への変更の検討をお勧めします。
  2. アルコールスプレーは、手洗い場所と各作業場に、置き場所を決めて配置しましょう。スプレーボトルには誤使用防止のため、内容物名を明記しましょう。
  3. 手洗い後の水分除去には、ペーパータオルを使用するようにしましょう。上向きに引き抜く使い方は、手の水分などで汚染を受ける恐れがあります。衛生的に使用できるよう、下から引き抜くタイプのホルダーが推奨されています。
  4. 内壁と床の材質を記入しましょう。コンクリートやステンレスでなくても、衛生的に管理できていれば良いと思います。劣化や破損については、施設設備点検補修計画実施表を使用して管理することを記入しましょう
  5. 天井や照明器具の清掃については、清掃チェックリストに埃が溜まらないような、清掃頻度と方法を明記して、実施状況を記録します。実施状況を証明できるよう、清掃チェックリストは正しく記入して保管しましょう。
  6. 換気扇が適切な場所に設置され、衛生的に管理されていることを証明するため、設置場所を含めた店舗図面を作りましょう。洗浄については、清掃チェックリストに頻度と清掃方法を明記して、実施確認記録を残しましょう。
  7. 調理台、ガス台、シンクの清掃頻度と清掃方法も、清掃チェックリストに明記して、実施記録を取りましょう。これらの汚れやすい設備や場所は、毎日清掃する項目に設定しましょう。
  8. 給湯器を備えたシンクについては、店舗図面に書き入れるようにすると良いと思います。
  9. 食器や器具を保管する扉付きの棚の設置が求められています。飲食店でこのような設備を設置できるところは少ないと思います。扉がガラスなら破損の恐れもあります。扉以外に食器を衛生的に保管する方法として、食器棚の清掃が重要です。清掃チェックリストに頻度を明記して、汚れがないところで食器を管理していることをアピールしましょう。
  1. ダスターについては、ウェブ塾レッスン7の「安全衛生マニュアル」に、衛生的な取り扱い方法を提案しています。右欄の「評価時の確認事項」を参考に、自社での衛生的な取り扱いを決め、マニュアルを作成しましょう。
  2. 包丁、まな板の保管について、おすすめなのは、包丁は紫外線殺菌ケースに入れ、まな板は殺菌水槽に浸漬しておくという方法です。殺菌装置がない場合は、作業区ごとに安全で衛生的な方法で保管するようにしましょう。
  3. 包丁、まな板の用途区分ですが、生肉や生魚に使用する用具で、消費者がそのまま食べる食品を汚染しないようにすることが重要です。少なくとも、下処理用と仕上げ用を区分し、色や形で区分するようにしましょう。
  4. 冷蔵庫・冷凍庫の温度確認の温度確認については、始業前だけでなく、終業後を含む1日2〜3回実施することが望まれます。基準温度や逸脱時の対応を明記した、冷蔵・冷凍庫温度確認表に記録をとって管理してください。
  5. 冷蔵庫や冷凍庫内で、食中毒菌の二次汚染を防止するルールについては、ウェブ塾レッスン7の「安全衛生マニュアル」の中にも記載しています。生肉や魚などの生の食材と、加熱後やそのまま食べる食品は、別の冷凍庫や冷蔵庫を使用することが望まれます。不可能な場合は、上段、下段で明確に区分し、汚染の可能性があるものは下段に保管し、保管する食品は、容器に入れ蓋をするなど、交差汚染を防ぐためのルールを決めてください。
  6. 外装ダンボールについては、外部を流通する間に、異物や病原菌が付着している恐れがあるため、そのまま保管することはNG評価につながります。特に冷蔵庫に保管する場合は、外装ダンボールを外し、容器に入れるようにしてください。この時、外装ダンボールの表示がなくなり、品名や期限がわからなくなる場合は、内袋に表示するようにしましょう。
  7. 作業台はステンレス製であること作業区分によって使い分けていることが求められています。材質は洗浄殺菌ができる材質であれば問題ないかと思われます。置き場とそれぞれの使用用途を、作業場図面に記入しましょう。
  8. 常温食品の保管場所についてです。直射日光は食品や機材を劣化しますので、厨房の窓や扉は遮光することが必要です。防虫や期限管理については、作業日報で管理することをウェブ塾でご提案しています。原材料は置き場に、品名を表示して管理することが推奨されています。置き場を決めることで、色々な所に置いて先入先出ができなくなることを防ぐためです。
  9. 調理場内の整理整頓調理に不要なものの持ち込み禁止についてです。私物を持込むと、私物に付着した汚染を作業場内に持ち込むことになるため、タバコを含む一切の私物の持ち込みは禁止しましょう。やむなく私物を調理場で保管する場合は、ビニール袋に密封し、作業中は触らないルールにしましょう。
  10. ゴミ箱の設置が求められています。特に生ゴミ用は、ビニール袋では液漏れした場合、作業場内を汚染してしまうからでしょう。破損したり、汚染したゴミ箱を使用していると、監査の際にNGになりますのでご注意ください。
  11. 生の食品を加熱調理するの際の、安全な基準とその確認方法についての項目です。ウェブ塾内で紹介した「CCP唐揚げフライ工程」のマニュアルを参考に、十分安全な方法をルール化してください。
  12. 安全な加熱状態の確認方法ですが、製造ロットが決まっていない飲食店の場合、全ての加熱品に記録を取ることはかなり困難です。ウェブ塾では、温度計の精度確認を行い作業日報に記録し、作業場所に掲示した加熱ルールのマニュアルで実施を指導する方法を取っています。各作業工程で、確実に安全な加熱調理が実施できる方法を決めましょう。
  1. 営業許可証と食品衛生責任者氏名の掲示についてです。顧客が確認できるよう、店内の見やすい位置に掲示しましょう。
  2. 掃除用具の保管については、食品と区分した場所に置き場を決め、衛生的な保管方法を決めましょう。乾燥できるように吊るして保管することがポイントです。床に置きっぱなしにしているとNG評価になります。
  3. 客席の清掃については、清掃チェックリストで清掃方法を決めて実施し、記録を残しましょう。
  4. 戸外への廃棄物の出し方については、店舗の立地や産廃業者のルールによって適切な管理方法が違ってきます。個別の条件にあった衛生的で、衛生害虫やそ族の誘因にならないような管理方法を決め、清掃チェックリストで管理しましょう。
  5. トイレの清掃についても清掃マニュアルで清掃方法や頻度を決めて実施し、実施記録を保管しましょう。
  6. 鼠族や害虫については、作業マニュアルの始業前チェックで痕跡の確認をして、必要があれば防虫業者に殺虫を委託することが推奨されます。ライトトラップを使用する場合は、紫外線が外部から見えると、返って昆虫を誘引します。臭いの誘因剤も同様に虫が誘引されますので、トラップの付近に食品や製造機器を置かないよう注意が必要です。
  7. 調理場内は禁煙で、タバコの持ち込みも禁止しましょう。
  8. 食材を受け入れる際のルールについてです。受入れ場所の取決めや、配達員の作業場入場規制などのルールを決めましょう。
  9. 原材料受入れ時に立会いして確認する項目を決め、記録に残しましょう。レッスン6の「原材料受け入れ時の確認」をご参照ください。
  10. 原材料の産地を決めて表示している場合は、必ず納品書に記載し確認するようにルール化しましょう。米トレーサビリティー法に基づき、米や米粉を使用するメニューには産地を表示する必要があります。種に使用する原材料には、原材料企画書を製造元から取り寄せ、二次原料の産地や、添加物やアレルゲンもわかるようにしましょう。
  11. 製造に使用する食材の期限表示確認についてです。期限が切れていないことを、確認するルールを決めましょう。レッスン6では作業日報で始業時と終業時に確認するよう提案しています。期限切れで廃棄する食品は記録しておき、廃棄を減らすことができるよう、仕入れロットの適正化などを検討しましょう。
  12. 開封した調味料や、店舗で調理した仕掛品などの、適切な期限管理についてです。保管する食品には、全て期限を表示します。その起算日になる開封日や仕掛かり日を記載した上で、使用期限日を明記して管理しましょう。原材料・仕掛品保管基準をご参照ください。
  1. 生肉メニューについてです。生や不十分な加熱で、生食用牛肉以外の鳥獣肉を提供するメニューは、食中毒の危険が大きく大変危険です。このようなメニューを提供しないように確認してください。
  2. 従業員の健康確認についてです。従業員が食品を介して伝搬するような疾患にかかっていないことを、出勤時に確認して記録に残しましょう。ウエブ塾でご紹介した、従業者健康申告表に確認項目や基準を掲載していますので、ご参照ください。
  3. 定期的な健康診断については、従業員がたとえ1人でも、パートやアルバイトであっても、常時使用する労働者にあたりますので、通常年1回(夜勤などの労働者に対しては年2回)の定期健康診断が必要です。実施した記録は残しておきましょう。
  4. 作業服の衛生についてです。ウェブ塾では安全衛生マニュアルで清潔な衣類の準備を指導し、従業者健康申告表で清潔な衣服を着用していることを確認するようにしています。配布枚数を聞かれていますので、各社の対応を記入してください。
  5. マスクと手袋については、「揃えていること」という表現です。厨房作業については、食中毒菌の健康保菌者による食品汚染防止対策として、手袋とマスクを着用することは有効です。直接食べる食品に触れる際は、着用するようにしましょう。
  6. 手洗い方法について、従業員が決められた手洗いマニュアルを実施する為の、教育方法を問われています。手洗い設備の見やすい場所に手洗いマニュアルを掲示して、入社時の教育と掲示物での教育に加え、自社での取り組みを記入しましょう。
  7. 手洗いのタイミングがきめられていて、従業員がそれを守っているかを聞かれています。手洗いマニュアルに、手洗いのタイミングを明記してください。従業員全員に教育し、ルールを守らない人には積極的に注意するようにしましょう。
  8. 従業員教育については、従業員教育マニュアルを作成し、実施内容を記録表に記入しましょう。
  9. 器具などの洗浄殺菌については、洗浄チェクリストの洗浄方法の欄に明記しておくと、いつでも確認できます。食洗機を使用する場合は、食洗機近辺に、衛生的に洗浄する為の使用方法と、器具の入れ方の注意事項を表示しておきましょう。
  10. 食材の保管方法については、原材料・仕掛品保管基準に表示方法のルールを記載して置きましょう。安全衛生マニュアルに、衛生的な保管方法を記載していますので、全員に配布して定期的に教育するようにしましょう。
  11. 記録類の保管期限を決めて保管するように求めています。原材料や作業日報、クレームに関するものは3年、従業者の衛生チェックや清掃記録などは1年程度の保管で良いかと思います。ファイルに明記して保管するようにしましょう。
  12. 記録の確認に関する項目です。チェックリストには、作成者、確認者、承認者の捺印欄を設け、間違いなく実施されていることをチェックするようにしてください。リストに空欄や、後で証明にならない省略記号を記入することがないよう指導しましょう。

 次に、この認証制度で独特のコンプライアンスについての要求事項です。食品をめぐるコンプライアンス違反についての問題が相次いだために、労使協力して、健全で安全な、食を提供する環境を構築していくことが重要だと考えてのことだろうと思われます。

  1. 会社の品質方針が定っているかです。これはISOで規定されている項目で、会社として品質への取り組み方を社会や社内に表明し、品質マネジメントの根幹となるものです。毎年念頭に社長が発表し、掲示して社員全員が理解するようにしましょう。
  2. ルールやマニュアルの見直しについては、最低年1回は実施しましょう。クレームや事故などの対応で、マニュアルやルールを発行・変更する場合は、社内の会議にかけ、社長の承認を得て実施するルールを作ってください。
  3. 始業前ミーティングの実施についてです、従業員と管理者間で、情報を伝達し注意を喚起する重要な場になりますのでぜひ実施しましょう。ウェブ塾でご紹介した作業日報に、朝礼の内容を記入する項目を作っています。ご参照ください。
  4. 食品衛生法規に関する勉強についてですが、大阪府食の安全安心メールマガジンに登録すると、新着情報やセミナーや勉強会の申し込みなどの情報を得ることができます。これらの情報を、従業員教育に活用すると良いのではないかと思います。
  5. 食の安心安全に関する勉強についても、大阪府食の安全安心メールマガジンから情報を得ることができます。
  6. 食品のリスクコミニュケーションに関するシンポジウムなどへの参加についてですが、総理府の食品安全委員会が定期的にメールマガジンを発行し、色々な情報を発信しています。詳しくは食品安全委員会のfacebookホームページでご確認ください。
  7. お客様からの意見について、積極的に聞く姿勢であることが求められています。テーブルに質問要旨を設置するなどして、改善できる部分は改善し、記録に残しましょう。
  8. クレームの受付についてのルールです。お客様からいただく意見や苦情は真摯な態度で受け付けなければいけません。確認が必要な項目と注意事項をまとめた、クレーム受付チェックリストと、異常発生対応マニュアルを例としてご参照いただき、自社の対応内容を決めてください。
  9. クレームの再発防止対策については、原因究明と再発防止をまとめた、クレーム・異常発生報告書を作成し、再発防止対策は会議で承認を得て実施するようにしましょう。
  10. 営業者と従業員の緊急連絡体制が求められています。各事業所で確実に連絡できる方法を決めてください。
  11. 消費者の健康被害が考えられる事態が発生した場合の保健所への報告については、異常発生対応マニュアルに連絡先を明記しておきましょう。
  12. 食品を介して消費者に被害が出る可能性がある場合は、自主回収の広告を出す必要があります。異常発生対応マニュアルに、どのように公表するかを決めておきましょう。
  1. 社内通報についての項目です。ウェブ塾で紹介した、安全衛生マニュアルの社内規則に明記しています。店内の不正行為をそのままにしては、外部から企業の姿勢を問われる結果になります。内部通報で不正を正す姿勢を明確にしましょう。
  2. 飲酒運転防止については、提供した側にも罰則があります。店内にポスターを掲示したり、注文の際に運転しないことを確認するルールを作りましょう。
  3. 未成年者の飲酒は法律で禁止されていますので、提供前に確認するルールを作ってください。
  4. 従業員への接客教育は、近年顧客とのトラブルが深刻になっていますので、対策のためにも必要な教育内容です。教育マニュアルに加え、実施記録を残しましょう。
  5. 施設外部への環境対策のため、必要な清掃やメンテナンスは清掃チェックリストや、施設設備点検計画表を作成して、問題が発生しないよう対応しましょう。
  6. 食器やグラスなどの清潔と、硬質異物の防止についてです。洗浄方法は、適切な洗浄方法をルール化し、洗浄場所に掲示して間違いなく実施できるよう教育しましょう。破損やひび割れた食器は使用しないようにし、廃棄までの保管場所を決めて管理するようにしてください。
  7. 食品に含まれるアレルギー物質についての情報は、アレルギー疾患を持つ顧客にとって、健康被害に直結する問題です。特定物質に指定されているえび、カニ、小麦、そば、卵、乳については、メニューに明記しておきましょう。また、使用状況を尋ねられた場合に、お答えする情報は、メニュー別の一覧表を作成して保管しましょう。
  8. カロリー表示については、定番メニューで食材の内容が決まっているものには、表示しておきましょう。毎日内容が変わるものには必要ありません。
  9. 店内の禁煙についてです。施設内を禁煙にするか、換気設備をつけた分煙室を設けるか、受動喫煙対策を決めましょう。
  10. 原材料の産地についての項目です。米飯メニューがある場合は、米トレーサビリティー法で決められた表示が必要です。その他の原材料の産地を尋ねられた場合に情報を提供できるよう、納品伝票に産地を記入しておくと良いと思われます。
  11. 顧客に対する食の安全安心に関する情報発信です。大阪府の食の安全安心課から発行されているポスターや出版物がありますので、顧客に見やすいよう、店舗に置いておくのも良い方法ではないかと思います。
  12. その他の認証取得状況については、各社の状況を記入してください。
  13. 異常発生時の避難誘導については、ウェブ塾でも安全衛生マニュアルで取り上げています。近年、特に災害が増加しており、最寄りの避難場所までの経路については、図を掲示するなどして、従業員全員が対応できるようにしましょう。

 ここまで、大阪府食の安全安心認証制度の認証基準について説明してきました。

 要求されている内容は、どれもさほど難しいものではありません。これだけのことでも、完全に実施できるルールをつくって、確実に実施したことを記録に残し確認することで、食の安全安心を向上することができます。

 認証をとることで、そこから視野を広げることができます。一度挑戦されることをお勧めします。

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